血の匂い

任務から帰ってチームの部屋に戻ると、リーダーであるリゾットが待ち構えていたかのように扉の前に立っていた。私はただいま、と驚きつつもそう言って、皆はいないのか、と部屋の中を見渡す。

「皆出払ってるの?任務?」

「あぁ、プロシュートとペッシは任務だが、他の奴らは買い物に行った」

「ふうん・・・リーダー、報告は後ででも?シャワーを浴びたいの」

「・・・」

リゾットは返事をしない。代わりに私をじろじろと見て、すん、と鼻で空気を吸った。それからわかった、と返事をして定位置のソファーに座る。

「何、今の」

「・・・確認だ」

「確認?」

「誰の血の匂いか」

「・・・わかるの?」

そう聞くとリゾットはいや、と言って本を読み始めた。これ以上は話す気はないらしい。私はリゾットを一瞥し、バスルームに向かった。体にこびりついている血を洗い流しながら、私はもしかしたらリゾットが確認したのは私の血の匂いなのではないかと思った。今回の暗殺は怪我はしなかったが返り血を浴びた。見える場所は拭いて来たが、服で隠れそうな場所は拭かず、そのまま急ぎ帰って来たのだ。おかげで髪の毛にまでこびりつき、なかなか落ちなかった。リゾットが帰って来た私を見て心配したのでは、と考え、私は頭を振った。暗殺に身を置く私達には、そんなこといちいち考えたりしない。心配なんて、要らない感情だった。きっとリゾットにも何か違う意味があったのだろう。

「リーダー、報告」

「あぁ」

「特に失敗もなく無事暗殺完了、報告書は、」

「特筆すべき事がなければ特には必要ない」

「そう、楽でいいわ」

濡れた髪をタオルで拭きながら、リゾットの正面に座る。リゾットが私をちら、と見て、読んでいた本を机に置いた。そして、私に近づき覆い被さる。リゾットの整った顔をじっと見ていると、ゆっくりと口付けられた。

「なまえ」

「何か?」

「いや・・・随分と返り血を浴びていたな」

「静かに、気づかれずに暗殺が命令でしょ?寝込みを襲って首をかっ切ったの、だから」

リゾットに説明すると、彼は聞いているのかいないのか、私にもう一度口付けた。唇を舌で舐められ薄く口を開けるとすかさず舌が入ってくる。満足のいくまで私の口内を犯し、ちゅ、とリップ音を響かせ、リゾットの唇が離れた。

「良い気分ではないな」

「え?」

「自分の女が他の男の血をつけて帰ってくるのは」

「・・・我が儘ね」

これが私達の仕事でしょ、とリゾットに言うとリゾットは静かに息を吐いた。まさか嫉妬だったなんて、と笑うとリゾットは少しムッとして私から離れた。

「案外可愛いところもあるのね、リーダー」

「・・・」

「でも仕方ないよね、私がリーダーの血を浴びるわけにはいかないもの。それはそれでゾクゾクするけど・・・」

「悪趣味だな」

「リーダーもね。でも・・・私はリーダーを殺せないから」

二重の意味で、と呟く。リーダーはふっと笑って、そうだな、とまたソファーに座り本を開いた。


end
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リゾットが書きたかったんだ、ずっと


2014/04/29 宙

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