*同棲シリーズ

些細な事で喧嘩してしまった。どちらかが悪いのではない。今回はどちらも、悪い。お互いむきになってしまい思ってもないことまでぶつけてしまった。もういい、と数時間前に出ていった彼はまだ帰ってこない。大方僕らの共通の友人に愚痴でも言いに行ったのだろう。しかし、それにしても遅い。もう時間は午前12時を回る。もしかして泊まってくるのだろうか。嫌だ、いくら友人だとしても、彼が誰かの家に泊まるなんて。嫌だ。

「うおっ!?」

パチン、と部屋の明かりをつける音がして、彼の驚いた声がした。ぱっと顔を上げると、彼が気まずそうな顔をしてこちらを見ていた。

「・・・」

お互い無言で目を逸らす。彼は床に座り、コンビニで買ってきた弁当をテーブルに置いた。そういえば夕飯を食べていない。夕飯前に喧嘩して、彼が出ていってから僕はずっと部屋の隅で丸くなっていた。ずっと、彼の事を考えながら。

「・・・おい」

「・・・」

「いつまでそうやってんだよ」

ベルトルト、と名前を呼ばれる。顔を膝に埋めたまま、僕は少しだけ顔を上げ彼を見た。彼はこちらを向かずに、弁当をまずそうな顔で食べていた。

「お前がいくら丸まってても、そのデカイ図体は隠せねぇからな」

「・・・」

「そういうところが、イライラすんだよ」

彼の言葉にびくりと体を震わせた。いっそう丸くなり、ぎゅっと自分自身を抱き締めた。

「・・・ベルトルト」

「・・・」

「なんつーか・・・いや、悪かった」

「・・・ジャン」

彼が、ジャンが僕の目の前にしゃがみ、こちらを見ながらそう言った。恐る恐る顔を上げると、呆れたような顔をして笑っていた。

「言い過ぎた」

「ジャン」

「あと、マルコに愚痴って来たのも、悪かったよ・・・お前はそういうの、嫌がるからな」

「・・・っ」

「泣くなよ・・・泣くことじゃねぇだろ」

ジャンはしょうがねぇな、と言いながら僕の頭を恥ずかしそうに撫でた。ごめん、と小さな声でどうにか呟くと、ジャンは頭を撫でる手を止めて呆れたように笑い、ため息をついた。

「ジャン」

名前を呼んで腕を伸ばし、ジャンを抱き締めた。力を入れるとジャンが「苦しいだろ」と文句を言いながらも僕の背中に腕を回した。

「・・・っ、こら、ベルトルト!」

「嫌だ」

「なっ・・・!」

ジャンの首筋にキスをして、甘噛みする。くすぐったいのか痛いのか、我慢して震える彼が愛しかった。

「仲直りしよう、ジャン」

「・・・あぁ」

ジャンの頬に触れ、キスをしながら床に倒れこんだ。


end
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同棲シリーズ。


2014/04/21 宙

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