!Buon Compleanno ※ヒロイン死ネタ 「ジョルノ、誕生日おめでとう」 毎年小さなケーキとメッセージカードで祝ってくれた彼女は、もういない。誕生日なんて僕にとってはなんてことない、いつもと変わらぬ日だった。小さな頃からバースデーケーキやプレゼントなんてもらったことのない僕は、誕生日なんて自分でも忘れる程のもの。けれど、彼女は、僕と出会ってから毎年、僕の誕生日を祝ってくれた。僕が忘れていると「大事な日なんだから」と少し怒って、おめでとうと微笑んだ。 「・・・ジョルノ?」 「ん、あぁ・・・ミスタ」 「何をぼーっとしてんだよ、主役がいねぇと話にならねえだろうが」 「そうでしたね。だけど、ファミリーで誕生会なんてしなくても」 「ばっか、こういう時にボスの威厳ってやつを見せねぇと」 「他で見せますから」 「問答無用!ほら、行け!」 今は、彼女の他に祝ってくれる人がいる。それがどんなに媚びへつらっているものでも、きっともう自分の誕生日を忘れることはないだろう。 「ミスタ、もう挨拶はあらかた済みましたし・・・僕は戻ってもいいですか?」 「あ?んー・・・」 「今日は、なまえと出会った日でもあるんです」 ミスタにそう言うと、彼はわかった、と返事をしてあとは俺に任せろとパーティーの中心に戻った。すまない、とだけ言って部屋に戻ると、赤いリボンでラッピングされた箱が一つ、机に置いてあった。 「・・・これは」 部下達から送られたプレゼントの山とは別に、一つだけ机に置かれたそれを手に取る。箱を持ち上げた瞬間、何かが落ちた。 「カード・・・?」 小さなカードだった。床に落ちたカードを拾い、メッセージを読む。そこには、彼女の文字で、彼女の名前と、一言だけのメッセージがあった。 「なまえ・・・?」 リボンをほどき、箱を開けると、毎年僕にくれていた小さなケーキが話に入っていた。カードに、水滴がポタリと落ちた。 「全く・・・貴女って人は」 きっとミスタに頼んだのだろう。いつ頼んだのかはわからないが、きっとあの旅の途中に。心配しなくても、忘れない。誕生日の度に、思い出す。 「Buon Compleanno・・・か、毎年同じですね」 目をつむると、笑顔でおめでとうと言うなまえが浮かんでくる。定番の一言が、こんなにも僕を嬉しく、幸せにしてくれるなんて。 「ありがとう、なまえ」 いなくなった君に向け、小さく、呟いた。 end ---- ジョルノ誕生日おめでとう! ちょっと切ない系が書きたかったのでこんな感じになりました。 2014/04/16 宙 |