報告と告白と

『バカタレ!!』

昼休み、ちょっとからかってやったらいつものようにそう言って頭を小突かれた。

「…ふへへ」

そんなことが嬉しくて堪らない。顔が緩みっぱなしで友人達に気持ち悪いと何度も言われ、一瞬はキリッとして見せるが思い出す度に顔が緩んでしまう。この気持ちは、多分、私には一生縁がないと思っていたアレだ。

「おい、なまえ」

「……ぐへへ」

「なまえ!!」

「え、あ…兄さん!」

「またそんな気持ちの悪い顔をして…いい加減止めてくれ」

同じ顔でそういう事をするなと、私の兄さん、食満留三郎がため息をつく。だって、と私が言うと兄さんはハイハイと面倒臭そうに言いながら私の正面に座った。

「で、何だよ、相談って」

「うーん…相談っていうか、報告なんだけど…ちょっと恥ずかしいなぁ…」

「……帰る」

「あぁっ、待って待って!!言うからっ!」

立ち上がる兄さんを掴んで無理矢理もう一度座らせた。それから私は深く息を吐いて、覚悟を決める。

「あのね……好きな人が出来た」

「……は?」

「やだ兄さんったら、もう一度言わせるつもり?私愛してる人が…」

「そうじゃねぇっ!つーか、何で言い直してんだよ!好きな人でいいだろ!」

「いや、文次郎を想う気持ちは好きより上だなこれは、うん」

私がそう言うとガタッと音がして兄さんが後ずさった。目を丸くして、驚いている。

「も、文次郎…だと…!?」

「あ、言っちゃった」

「なっ、なん…!?」

「何でって?聞いちゃう?文次郎って頼りになるし、叱ってくれるとこはちゃんと叱ってくれるし、でも実は優しくて後輩思いで…たまに馬鹿なところも」

「も、もういい!!やめろ…やめてくれ…」

畳に突っ伏してうなだれている兄さん。まぁそんな反応だろうとは思っていた。予想通りで少しつまらない気もするが。

「で、今から告白しに行こうかなって」

「だっ、駄目だ!大体、文次郎は男だぞ!?」

「兄さん…私、男装はしているが女だぞ」

「ぐっ…だが、文次郎はどうだかわからんぞ!告白したってな、なまえの正体を知っているとは言え、男装した女なんぞ女らしさのカケラもないと言って相手にしな……」

「っ…やっぱり、そうかな…私、ずっと男として生活していたし…兄さんも、私の事女らしさがないって思うなら…可愛いげもないし、振られるかな…」

「あ…いや…そんなことは、その、なまえは可愛いぞ!男装してても忍術学園一番だ!文次郎も…認めたくはないが、振るとは考えにくいというか、」

「だよな!!んじゃ報告したから!私告白してくるー!」

そう言って自室を飛び出して目指すはい組。兄さんの言葉にならない声が聞こえた気がしたが、知らない振りをした。




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