!最初で最後の口づけ ※ヒロイン死ネタ 「なまえちゃん…!!」 與儀の叫ぶ声がした。何でだろう。あたし、どうなったんだっけ。確か、能力者が町に潜んでいる情報があって、平門さんに言われて町に駆け付けた。そこで能力者に会って…そうだ、不意を突かれたんだ。後方からの攻撃を回避出来なくてあたしの体を能力者の腕が貫いた。 「…なまえちゃん!なまえちゃん…!」 「與…儀、」 幻覚だろうか。だってここに與儀がいるはずない。あたしの頭がいいように作り出しているのだろう。 「與儀…あのね、」 近くにいるだけでいい、そんな片想いがもう2年。長いなぁって思い返すとあたしは少し悲しくなる。2年の間、何も出来ない自分を責めてしまうのだ。近くにいるだけでいい、なんてただの言い訳だった。 「お、おはよう…!」 「あ、おはようなまえちゃん」 挨拶が出来た、少しだけ話をした、そんな些細な事に満足して、時間を無駄にしてしまった。けして知らない仲ではないのに、恥ずかしくて自分から遠ざけてた。 「なまえちゃん、今度のショーなんだけど」 「うん…あたしはニャンペローナの横で一緒に歩くよ」 「そうだよね!それで子供達を楽しませる為に打ち合わせをしたいんだけど…」 「ごっ、ごめん…!私平門さんに呼ばれてて…」 「あー、そっか…じゃあまたあとで!」 こんなことになるなら、もっと積極的になるんだった。後悔するくらいなら、告白すればよかった。 「…與儀」 意識が薄れていく。涙が流れていくのは、冷たさでわかる。 「ずっと、大好きだった…」 どうにか笑うと、涙で冷たかった頬に温もりを感じた。與儀があたしの頬に手を当てている。温かくて、安心する。これならゆっくり眠れそうだ。 「…俺も、大好きだよ…!ずっと、ずっと大好きだったんだ…!」 「…ありが…と…」 「なまえちゃん…!」 俺が駆け付けた時には、なまえちゃんのお腹に大きな穴が空いていて、助からないと一瞬でわかった。それでもどうか生きていて欲しくて、目を開けて欲しくて、大声で名前を呼んだ。與儀、と今にも消えそうな声で答えてくれた時は、涙が溢れた。 「目を開けて…!」 想いが通じた今、彼女は安らかな顔をして、眠ってしまった。 「お願いだ…お願いだから、目を…」 どうして今まで言わなかったんだろう。臆病な俺はいつも結果が怖くて、姿を見てはドキドキして、かっこつけて逃げ回っていた。こんなことになるなら、ちゃんと伝えるべきだった。 「なまえちゃん…」 「もう一度…好きって、大好きって言ってよ…」 眠った彼女の涙を拭いて、大好きだよ、と最初で最後の口づけをした。 ---- 43334hitキリリク夢 春様、リクエストありがとうございます!!大好きな與儀で切ない夢が書けたので嬉しい限りでございます!悲恋とか死ネタとか…大好きでして… ご期待に添えていると良いのですが…もし気にいらなかったらぶん投げて下さいね。 改めてリクエストありがとうございました! 2013/07/28 宙 |