マグル大好きな俺たちのパパが、またもやマグルの道具を持ってきた。
でっかい真っ黒なガラスが嵌め込まれた箱に、マグルの少年少女が映るパッケージの箱。
俺より先に漁り出したフレッドに声をかける。
「相棒いったいこれはなんだ?」
「ジャパニーズドラマさ。俺たちと同年代のマグルが、どう生活してるかがわかるらしい。」
「同年代!?彼らが!?」
「東洋人は童顔で有名だろ?
ナマエだってそうじゃないか。」
ああ、確かに。
パッケージにいる左から二番目の女の子なんかナマエに雰囲気がよく似てる。
「それにしてもこれどうやって見るんだろうな」
「貸せよ相棒!デンキって奴が必要だってパパがいつも言ってるだろ」
フレッドの手からコンセント?であってるのか??まあ、あの黒くて長い、先っちょに牙みたいなのが付いてるやつを、パパがいつもしてるみたいによく分からない箱に刺した。
途端、ブツンッと真っ黒なガラスが光った。俺も相棒も肩がびくっとなり、お互い顔を見合わせてにやっと笑う。
ザザザーっと不快な音を立てながら、砂嵐に巻き込まれてるみたいな画面しか映らなかった。
「この次、どうする?」
「あっこのへん入りそうじゃないか!?」
フレッドが手当たり次第弄くり回し、なんとか見つけたようだった。パッケージの中身を手渡すと、それを試行錯誤しながら押し込み、ウィーンと飲み込まれていくのにほっと胸を撫で下ろした。
さっきまでの砂嵐が嘘のように鮮やかな映像が映り出した。
なんて言ってるかはわからないが、ちゃんと英字幕が出るので助かる。
遠い東洋の島国の、見慣れない制服を着た彼らに俺たちはどんどん引き込まれた。
クラブ活動で汗を流し、テストに追われ、気になるあの子を追いかけ恋い焦がれ。
ナマエによく似た女の子は、俗に言う三角関係のど真ん中にいた。
恋敵であり親友である二人の男子が、夕日が照らす土手に座り、好きなあの子を心に浮かべ、好きだー!と叫ぶシーンが俺たちの心を打った。
「相棒、これがセイシュンってやつなんだな」
「そういや俺たち、悪戯は死ぬほどやってるけどセイシュンはしてないな」
「おい、悪戯とセイシュンどっち取るんだよ」
「悪戯に決まってんだろ」
そう言って笑ながら拳を打ち付けあったのがちょうど一年前。
俺は今、好きな子がいます。
ナマエ・ミョウジ。
別にあのジャパニーズドラマに影響されている訳ではない。実際、二ヶ月も立てばドラマのことはすっかり頭から消えていた。ただ、この一年間で、東洋人のエキゾチックな雰囲気とナマエの笑顔にだんだんと惹かれていったのだ。
今では10分に一回は溜息が漏れるほどベタ惚れである。
しかも同じクィディッチのチームメイトだから、最近では無意識に目で追ってしまい、練習も集中しづらくてほとほと困っていた。今のような休憩時間は、ナマエを目に入れないよう、ひとりで空を高く飛んで時間を潰している。
今日はすごく綺麗な夕焼けだった。真っ赤な雲が太陽に吸い込まれていくみたいだ。あのジャパニーズドラマを思い出す。
ああ、無性に「好きだ」って叫びたい。
好きだって叫んで、もしナマエにOKもらったら毎週プレゼントを送りたい。二人の初めてを全部記念日にして毎年お祝いしたい。
あー無理かあ…仲は呆れるほど良いのに、友達止まりだもんなあ。
しかも最近は俺から避けてる節があるから余計に気まずい。
でもナマエと恋人になれたら幸せだろうな、あーほんとにまったく泣きたいくらい、
「好きだな…」
「なにが?」
後ろから突然、ナマエの声が聞こえた。驚きすぎて変な声出るし箒から落ちそうになるし、「大丈夫!?」って心配されるし、俺すごいカッコ悪い。
「どうしたの、最近ぜんぜん元気ないじゃない」
「はは…」
君のせいだよなんて言えない。
それより心臓がうるさくて、そのまま口から飛び出しそうで、ポーカーフェイスに必死だ。顔が熱いのは夕日のせい。
「練習中も上の空で、悪戯だって不発ばっかり。何か、悩みでもあるの?」
ナマエの口調は、怒るものから心配するものへと変わっていった。
「いやぁ、そんな……ね。」
胸が痛い。
全部打ち明ければ、君は満足するのかい?
俺の気持ちを知ったまま、友達でい続けることなんてできるのかい?
無理だろう。
君は、そんなに器用じゃない。
黙った俺に痺れを切らしたのか、ナマエは溜息を吐いた。
「わかった、もう何も聞かないよ。
……もし、私がジョージの友達じゃなかったら、友達じゃなくて、ほら、恋人?とかなら、その…話してくれた……?」
顔を赤くしたナマエがどもりながら言った。ナマエの言葉に、俺は声が出なかった。
恋人?当たり前だ!
これは告白していい雰囲気か?
いやもうOKが出ているのか!?
落ち着け俺。
ナマエは単純に俺の悩みを聞きたいだけなのかも……いやでもどっちにしろ告白だよな!?
ナマエは、俺の沈黙に更に真っ赤になる。
「さ、さっきのは冗談!
もう、そんなに間に受けなくたって……黙らなくたっていいじゃない。」
眉が下がって泣きそうなナマエに、俺の心が急かされる。
「おーい、そこの二人!あと10秒で休憩終わりだ!降りて来い!」
オリバーの声が響いた。
ナマエが、くるりと背を向けた。
下降しようとしたナマエの腕を、無意識に掴んでいた。
「待って!」
「な、なに?早く行かなきゃ」
「好きだ!」
「…え……?」
「大好き!」
「だ、誰が」
「俺が!」
「誰を…」
「ナマエを!!」
俺の告白が夕日に照らされた練習場に響き渡る。
恥ずかしい、俺、公開告白してるじゃないか。
真っ赤な顔で、見つめ合う。
休憩終了のホイッスルが鳴った。
ゆっくり二人で降りていくと、チームメイトはおろか、グリフィンドールに収まらず通りがかりの他寮生までもが集まっていた。
魔法でクラッカーが鳴らされたり、おめでとうと言われたり、俺は元来のお祭り気質でテンションが上がったけど、ナマエはゆでダコみたいに、さきほどよりも真っ赤になっていた。
祝福の言葉に笑い返す余裕もないのか、若干俯いたまま、顔を強張らせて俺のローブをぎゅっと握り締めている。
その様子が余りにも可愛いから、少し悪戯心が擽られ、かがんで小さくキスをした。
周りがおぉーっと盛り上がる。
ぱっちーん!
ナマエの手が俺の頬を叩いた。
場が一瞬で静まりかえる。
「わたし、まだ、…まだOKしてない…!」
目元を潤ませナマエが声を絞り出す。
周りがざわざわと騒ぎ出した。
俺の心臓も早鐘が鳴り、冷や汗が背中を伝う。すっかりOKされた気でいた。
「…わたしもす、好き」
ナマエの言葉に、場内はまた一気に盛り上がった。いろんな人に頭を撫でられ、俺もナマエも髪の毛が乱れ放題だった。
誰が始めたのか、キスコールが起こり、だんだんと大きくなって空気を震わせた。
「キスしていい?」
「っ…」
頷きはしないけど否定もできない赤いナマエに、ゆっくりキスを落とした。
ああ、夢みたいだ。
ナマエとキスができるなんて。
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -