一
!特殊パロ
兄キッド×妹キッド、兄ロー×妹ロー
夢を見た。
なんか、変な夢だった。
辺りはいつも通りの風景。
でも、あいつが、妹が、
「あれ、ロー兄ちゃん!?」
「あ…兄貴…!?」
俺の知らない男と手ェ繋いで、歩いてた。
これって、悪夢だよな?
ていうか、夢、だよな…
「「な!」」
「な、と言われてもな…」
ある冬の日の、とある高校の昼休み。
がやがやと皆が楽しげに休み時間を過ごしている教室の一角に、彼らはいた。
「なにが"な!"なんだ…」
「だから!これって悪夢と捕らえていいよな!って話だよ!第一、トラファルガーとおんなじような夢見るとか…」
「ばっか、ユースタス屋ちげぇよ!俺の可愛い妹に変な虫が付くなんてありえない、ていうかありえてはならない問題であって」
「このシスコン野郎キメェから黙ってろ!」
今日の昼休みのもっぱらの会話の内容はこれである。
もう高校生にもなって夢のことをこれだけあーだこーだ言うキッドとローに、友人のキラー、ペンギン、キャスケットは揃って溜息をついた。
「ま、どっちもどっちって話で」
「違いない」
「はぁ!?いやいやいや」
「適当なことを言うなよキャスケット、消すぞ」
2人の話通り、彼らにはそれぞれ年が2つ離れた妹がいる。妙なことに、2組とも兄妹同じ名を持ち、2組とも両親が殆ど家に不在なため、昔から兄が妹の面倒を見てきた。
そのためか、兄は妹のことがいつも気掛かりでならない。
今は、皆同じ中高一貫校のそれぞれ高等部2年と中等部2年である。
「でも、夢って案外現実になることありますよね」
ふと、1年のキャスケットが言ったその言葉に、2人が固まった。
「……え?」
「だからお前適当に言うなって、俺だって怒るぞ」
「て、適当っていうか、いや、実際、むぐっ」
「お前が話すとややこしくなるからもう黙ってろ」
ペンギンの手によってキャスケットが押さえ込まれ、息苦しそうにもがいている。
しかし、そんなことより。
どこかぎこちなく固まっている過保護な兄2人を見て、キラーはなんだか嫌な予感を一人だけ感じていた。
(何も無ければ良いが……)
「チビのせいでゆっくり寝られなかった」
「キャスケットのせいで妹にメールしまくってうざがられた」
「ええぇ…!?俺のせいっすか……?」
放課後にも2人は変わらずなにかとぶつくさ言っていた。
そもそも授業中なのだから寝る必要は無いし、学校に携帯は持ち込み禁止で授業中に弄るなんて以っての外なのだが。
「はいはいもう良いから帰るぞ」
痺れを切らしたペンギンの一言とさっさと歩き出したキラーをきっかけに5人は下駄箱を出て、校門に向かった。
この学校の高等部と中等部は隣接してあるため、校門を出ると沢山の生徒でごった返していた。
「相変わらず人多いな…」
「ローいねえかな」
「お前はまたそれか」
「ユースタス屋は探したくならないのか?妹」
「ならねぇよ!」
自然と横に並んだキッドとローは、先を歩く3人の後を追う。その間もローは辺りを忙しく見回している。
「あ、いた
……え?」
「なんだよ」
すると、どうやら妹を見つけたらしいローの足が止まった。前の3人もキッドも気が付いて、立ち止まる。
「どうした、ロー」
ペンギンの問い掛けにも、ローは何も答えず、目線を動かさない。そしてゆっくりと、右手でその方向を指差した。
「なぁ、あれ、誰だ」
4人がその方向を見ると、そこには見覚えのある、白に斑点模様がついたファー素材の、兄と同じ帽子から、藍色の髪が覗く、紛れも無いトラファルガー家の妹が居た。
「てめぇんとこの妹じゃねぇか」
「じゃなくて、横、見てみろ」
言われるままにもう一度そっちを見ると、皆は息を呑んだ。
妹の横には、短く借り上げた髪を上げ、いかにもスポーツの得意そうな男子が立っていた。
そう、男子である。
2人は楽しそうに笑っていて、それは正に、兄が見た夢と同じ風景だったのだ。
「うわ…」
「まさか、ある意味凄いな、ロー」
「あれ、この前陸上で全国出てた奴じゃないですか?」
思わず同情に似たそんな言葉を周りが言っても、もう兄には聞こえてはいないだろう。ただただローは固まるばかりだ。
「……あれ」
しかし、ただ一人、ローとおなじような反応をしめしたのはキッドだった。
キッドは目を細めながらぽつりと言った。
「なんか、俺んトコの妹も、男といるわ」
キッドの視線の先には、これまた兄と同じ艶やかに光る赤い髪を持ち、短いスカートから伸びる足が白くきれいな、ユースタス家の妹がいた。
そして、その横には、すらりと背の高い眼鏡をかけたいかにも頭の良さそうな男子がいた。いわゆる優等生タイプだが、実際に彼は中等部2年の学年首位の成績を誇るある意味また有名人だった。
2人は、まさに今朝見た夢と同じ内容に動揺が隠せなかった。ローはわなわなと震え、キッドはローほど取り乱す訳では無いが、慌てているのは安易に見て取れる。
「キッド……」
「まぁ、妹達も年頃なんだからそんなことぐらい許してやれ、ロー。」
「そうっすよー、帰りましょ、って、えぇ!?」
3人が歩き出そうとした、その時、気が付けば兄2人はその場にいなくなっていた。
そして、なんと、走り出していた。
向かった先はもちろん、我が妹の元。
「おいてめぇ、俺の可愛い妹になんの用だ」
「あれ、ロー兄ちゃん!?」
「てめぇ、誰だ」
「あ、兄貴…!?」
「あーあ…」
生徒で賑わう学校の前で、一際視線を集めてしまった2人に思わず溜息を漏らした友人3人は、他人の振りをしてそそくさと歩き出した。
(やっぱり、な…)
不幸なことに、予感が当たってしまったキラーは少しげんなりしながら、よく晴れた青い空を仰いだ。
彼らにいわゆる一般的な"青春"はやってくるのだろうか。
この日の夜、妹たちにしっかりと叱られ、兄が揃って次の日落ち込んで登校してきたのは、言うまでもない。
――――――
光の速さで攫ってきました。
この速さには黄ザルも敵うまい。
まさかこの話を頂けるとは…!!
全俺が歓喜した。
シスコンなキッドとロー、すっごいツボですww
そして妹達の「お兄ちゃん」「兄貴」呼びがクリティアカルヒットです(鼻血)
萌え殺す気ですねわかります!
そしてこれは「トラファルガー妹とユースタス妹と一緒にいる男、それ俺なんだ。」とタグをつけたくなるww
私がボヤいていたがために無理難題言って申し訳ないなぁと思っていたのですが、見事に書いてくださってもう感謝感激雨霰!!
本ッ当にありがとうございます!
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[mokuji]
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