三大ストーカー | ナノ
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今日も高杉君はかっこいいなあ。

私は左斜め前の席に座る高杉君をぼんやりと眺めた。

長い漆黒の前髪の奥にちらつく鋭い隻眼は、窓の外を射抜くように見つめている。先生が英文を読み上げる声に抑揚が無いせいか、先ほどから眠たそうに瞬きを繰り返したり、小さく欠伸を漏らす様は、とても可愛らしくて胸の奥がきゅんとなる。

これが恋ってやつなのかな。

あまりの美しさに見惚れていると、不意に高杉君が振り返った。心臓がありえないくらいの音をたてて破裂するかと思った。慌てて視線をそらすけれど、私は動けなくなる。やばい、見過ぎた?

背中を冷汗が伝うのを感じながらあたしは机の上の教科書を見つめた。今までずっと授業に集中していた風を装うけれど、まるで頭に入ってこない英文。

どうしよう、どうしよう。気持ち悪いって思われた?シャープペンシルを持つ手が震える。いつの間にか眠気を誘う先生の音読は止んでいて、変わりにチョークが黒板を叩く音が教室へ響いていた。

私はごくりと唾を呑みこみ、意を決した。ゆっくり、できるだけさりげなく、彼を盗み見る。

高杉君の姿を確認した私は肩の力が抜けるのを感じた。彼は私を気味悪そうに見つめることも、威嚇するように睨みつけることもしていなかった。ただ、机に伏せっていただけ。

なんだ。

ふっと軽く息を吐き出して、私は背もたれに力なく寄りかかった。私、すごく自意識過剰じゃない?恥ずかしすぎて死ねる。シャープペンを握る力を強めれば、手には無機質な感触。ほんの少しの憧れから、それは彼と同じ種類の物だった。

そうだよ。高杉君が私のことなんて見てるわけないのに。

自嘲気味なため息を吐き出して、もう一度高杉君を見つめた。彼の背中は規則的に揺れていた。きっと眠ってしまったのだろうな。



彼が私の名前を知っているかどうかさえ、怪しいのに。