一撃男 | ナノ


▼ プラシーボ効果の甘え

自宅には帰りづらい


そんな思いが、自分を支配している






ニュースで見た隕石落下に慌ててしまい大人気ないことしました


ただのご近所さんなのに、衝動的にジェノスくんを怒ってしまいました




よくよく考えれば、


一般市民に避難警報出すのが30分前だと言うのがおかしな話でした



国をあげてのヒーロー大好き具合を計りかねた私の落ち度でした




戻った際には、街のあちらこちらが破壊されていて


頭が冷え切るまでは考えが及ばなかったけれど



普段から、町のあちらこちらで特撮を行っているこの世界観



さしずめ今回は映画的なイベント感覚の撮影シーン






冷静になり気づいた今は、ひたすら恥ずかしい




ジェノスくんは、いつも通りヒーロー活動をしていただけなのに


正座までさせて、バカじゃないのわたし




何度も繰り返し思った、あの時の自分をプールに突き飛ばしたい



そんなことを延々と考えていたもので、突然呼ばれた店長の声に


少しだけ肩をビクリと揺らしてしまった





「七面鳥の蒸し焼き娘ちゃん、各ケーキの個数を確認してきてもえらる?」

「はい、確認してきます」

「誰も見ていないところでも、笑顔でお願いね」



奥から顔出した店長に指示され、さっそくディスプレイに向かう




落ち込んでいるにしたって、仕事に支障でないよう気を付けなくては





気持ちを切り替える意気込みをして再び仕事に取り掛かる




ケーキの減り具合は、いつも通りかもと思いながら

メモを取りつつ、正確に数えていたらお客様がいらした




「いらっしゃいませ!」

「ひとりだ」

「はい、それでは席までご案内いたしますね」

「…ここにあるケーキは新作かい?」

「あ、はい!そちらおすすめになっておりますよ」

「じゃ、これでケーキセットを」

「かしこまりました」

「席は、あそこにさせてもらうよ」

「は、はい!」



進んでいくお客様のあとを追って行き、注文を再度確認して下がる


このお客様奥の席が好きなんだな、と思いながら

注文されたケーキセットを運んでいったら、誰もいなかった




でも、荷物はあるからお帰りではないのだと知る







「すみません、注文お願いしますー」

「あ、はい!ただいまお伺い致します!」


また、新しい注文が入り仕事場はいつも通りに回っているようで

安堵させてくれることがありがたく感じる




お店も閉店間際になってくると、もうほとんど入店のお客様はいない


だいたいはケーキをお持ち帰り希望が多くてレジでスタンバイする





最後に残ったお客様が席を立つまで気を抜かずに頑張ろうとするも


どうしても悔いになってることと言うのは頭に浮かんでくるもの





いくら衝動的に、やってしまったとはいえ…溜め息しかつきたくない現状




「会計を頼むよ」

「あ、お預かりします」

「…」

「カードをお預かりします、それではこちらに…」

「ああ」


なんだかカードがカッコイイ、どのカードも似寄るものなんですが

カッコイイデザインのカードでした



カードをお返しすると、彼はじっと私を見据えてこう言った



「また来るよ」

「ありがとうございます!」

「その時までには、その陰気臭い顔どうにかしておいてくれ」

「!」

「まさか、そんな顔で接客される側は気づいてないと思ってるのか」

「いえ、決してそのようなつもりでは」

「つもりだったにせよ、じゃないにせよ…結果が同じだ」

「申し訳ございませんでした」

「さっさと直すことだね」

「はい、ご気分を害させてしまい本当にすみませんでした」

「事情があろうと、出勤してくる以上は務めるべきだ」




怒られてしまいました、それもそうでこちらに非がある

仕事に私情を持ち込んだのが悪いわけで



切り替えたつもりでも、

どこか無意識に考えてしまっていたのかもしれない



した側はいつだって気づけなくて


された側はいつだって勘付くもの





お客様に対して、たへいん失礼なことをしてしまってたこと


今さら気づくなんて、本当に申し訳なくなります




さきほどのお客様



ちょっと『戦慄のタツマキ』さんみたいに厳しそうな人だったけど

そして叱られてさらに気持ちは沈んだけど

この事を気づかせてくれた、私には良い人に思えてきました



閉店のお掃除を済ませ、店長にも迷惑かけた事を謝りに行った



店長も気づいてたようで、しばらくは黙っていていようかと

思ってくれてたらしく、どうやら私だけが気づけずにいて



周りにはバレバレだったということですね




「…店長、なんだかご機嫌いいですね」

「だって有名なアマイマスクさんが、またこの店に来たからね」

「アマイマスクさん、……たしかヒーローネームの」

「そう、ほら最後にお帰りになられたお客様のことよ」

「あ……そうだったんですね」



たしか、前にも一度いらしてた

窓側が大嫌いな自分大好き人だったのか、店長に言われ思い出してきた




これで彼のご機嫌を損ねたのは二度目でしたよね



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