一撃男 | ナノ


▼ 灯されたのはどんな灯かりか


呼び出された場所に着くとS級ヒーローのバングがいた




見渡す限り、他の者はいないようだ






「…協会に呼ばれて来たのだが」

「協会の連中はみ〜んな避難しちまってこの支部はカラッポじゃよ」




他の連中がいない事が確信された今、いくつか疑問ができた



そもそも、呼び出した協会の連中が避難したのならば






俺は何のために呼び出されたのだろうか




聞くと、どうやら今回は隕石が落ちてくるという


しかし、先ほどニュースを見た限り、その話はなかったはずだ





俺がもう一度検索をしようとしていたら



今になって報道されていると伝えられた





避難を勧められたが、そういうわけにもいかない





「お前はどうするんだ」





聞き終わる前に去ってしまったが、先に隕石の解決を優先すべきだと


俺は判断をし、予測された落下地点へ向かう






ポケットから電話を取出し、七面鳥の蒸し焼き娘さんへ電話をかけた




「七面鳥の蒸し焼き娘さん、あまりお話する時間がないのですが」

「ジェノスくん?」

「少しだけお時間頂いてもいいですか」

「いいですよ」

「これから隕石が落ちてきます」

「…………うん?」

「俺はS級ヒーローとして、それを壊しに行きます」

「ジェノスくんは、大丈夫ですか?」





隕石が落下している最中




それを聞いた今でも七面鳥の蒸し焼き娘さんが最初に聞いてきた言葉






こんな非常事態にも、俺を心配してくれているのか








優しい人だ





「わかりません」

「……そうですよね」

「だが、俺はこの場所をなくすわけにはいきません」

「ん?」

「今まで俺の悩みにアドバイスを下さったり」

「…」

「いろいろと気にかけてくださり」





電話の向こうの七面鳥の蒸し焼き娘さんが黙っている






「本当にありがとうございました」






俺がこの市や周辺の町には近づかないよう、彼女に伝えた



安全なところまで付き添い届けることはできずに申し訳ない






「全てが収まるまで帰らないように」







今一度、俺に暖かい場所をくれたあなたを、守らなければ




今夜の鍋には参加できませんが





先生とふたりで楽しんでいただければ、俺は嬉しいです




先生には、何も伝えられなかったが




俺の日々ため込んでいる先生宛の手紙を読めば








俺の気持ちが通じるはずだ













「では、幸せになってください」






俺は電話の向こうにいる七面鳥の蒸し焼き娘さんの返事も聞かずに







電話を切った



先生の隣人に対する礼儀がないっていないな、などと


自分を嘲笑いながら、今ならこの行為を許せた気がする





下を見渡せば、さすがに今回は生存を諦めている者も多いな




どうにか隕石を破壊することはできないだろうかと考える


この町には先生も住んでいる…俺だけ逃げる訳にはいかない!









たとえ、もう二度と共に鍋ができなくとも




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