一撃男 | ナノ


▼ その瞳にうつる自分をもっとみてみたい


正式に国の団体が認めるヒーローになったサイタマさんのことは

正直、頭から離れない




あのあと、ジェノスくんに聞いたところ

サイタマさんはいつもと変わらずに、なる前と同じように過ごしているらしい




どういうことだろう、お仕事をもらえるはずなんじゃないのかな

とも思いつつ、もしかしたらもう辞めたくなったのかもしれない



この間、真面目なサイタマさんが相談してくるほどだから

やっぱり、彼がやりたかったヒーローとは違ったのかなと急かす真似は

あまりしたくなかった


「「あ」」



手に取ろうとしていた、最後のおにぎりは誰かと重なった




「病院の紫た…のひと」

「忘れろ」

「人の記憶はそう簡単に忘れられるものではないですよ」

「じゃあ、なかったことにしろ」



なんだろうか、この中学生を相手にしている気持ちはいったい

青年は、おにぎりから手を引いた


「もってけ、俺は他を買う」

「え、いいんですか」

「この間の礼だ」



ありがとうございます、とお礼だけ言い私たちはコンビニから出る

意外にも出るタイミングが重なりました


レジ店員さんがふたりいらっしゃったからなのでしょうが

なんだか、これも縁なのだろうかと思い、彼に声をかけることにしました


「よかったら、ちかくの公園で一緒に食べませんか」

「…意味がわからん」

「ご予定でもあるんですか」

「ない、がおまえと食べる義理はないだろう」

「…内股で走って行ったことも忘れますから、どうですか」



言うまでもなく、彼は驚いた顔をしたが、すぐさま了承してくれました

誰かと食事するのは久しぶりなので、負けじと押してしまいました


少し無理やりでしたが、さすがに買った量も多くないので

食べ終わったら、潔く引きましょうか




ぶつぶつと何かを言ってる彼を隣に公園へつき、幸いにも

あまり人はいなかった


とはいえ、無理やりだったため、沈黙が気まずいです



「おにぎり、半分どうですか」

「いらん」

「そう言わずに、まだ口もつけてませんから」

「…いい、自分で食えばいいだろう」

「…そうですか」



かたくなに拒む彼に、今度は引くことにした

ただひたすら過ぎるのは、黙黙と食べる時間だけ



誘ったのは自分だったのですが、すごく気まずいです



ちょっとサイタマさんが就職できたので、私も浮かれてしまいました





「おい、女」

「なんですか」

「この間のことだ」

「…病院の件なら、ちゃんと忘れますから」

「その話じゃない、『内股』と言ってただろう」

「はい」

「いつ気づいた」



心なしか、彼の目が鋭くなっている気がします

やっぱり男としては許せないですよね、プライド的なものが



てきとうに言っておいた方がいいのかもしれない



「と」

「と?」

「隣に座ってたおじいちゃんが笑ってたので理由を尋ねたんです」





正直、病院のことはもうあまり覚えてはいません

彼のことは覚えているものの、他は風景だったので、もうあまり覚えてなく




でも、彼はわたしよりもずっと上手だったようです






「嘘をついているな」





心の中で、たらりっとどこかからか音がしている

生まれと仕事で必要なスキルだそうで、すぐわかるのだと言われました



これは、なんということでしょうか


詐欺師の方なんですか


何の仕事なんですか、と気になっていると「俺は忍者だ」と返ってきました











「そうなんですか、内股で走っていくのが見えただけです」











ヒーローのみんなと同じ属性でした





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