アルスラーン王子とハロウィン‘16

「ハッピーハロウィン!!!トリ」


ガチャリ、静かに開かれたその扉は再び閉められた


「どうしよう、ダリューン」

「どうなさいましたか、殿下」

「気のせいだろうか、ゴホッが…」

「確かに私も、今しがた彼女の声を聞きました」


やっぱりか、などと思いながら

もう一度、先ほど閉めた扉をみつめる



「…おもいっきり、扉を閉めてしまったのだ」


なんか、カボチャを被った誰かが…いや彼女がいたから

つい、反射で、親しくしてくれるゴホッの訪問を無かったことにした



ゴホッは、別段強い訳でもない、正直普通の娘以下に弱い気すら

しているのだが、ゴホッが話す遠い遠い東にあるという母国の話を

気に入って、とくにナルサスが


そんなわけで、彼女も共に行動したりしてる


ナルサス曰く、たまに作戦の役にも立ってるらしい

何せ、母国では『歴女』という副業に加えて『腐女子』という本職を

ひとりと仲間で頑張っていたから、そこからの知識だったりと

私にも、実はよくわからないが……追い出すことにも疲れたので

彼女は、ここにいる



「ダリューン、もう一度扉を開けてみるとしよう」

「殿下…?」



また、あの変な…うまく言い表せないが、ナルサスの芸術よりは

現実味があるカボチャの作品だったし、私も落ち着いてみようと思う



「さ、先ほどはすまない…ってうわッ」

「てやっ!!!」

「殿下ああああああああああああ!!!!!!」



いきなり投げ込まれた彼女の作品は、ちょうど剣の手入れをしていた

ダリューンによって、真っ二つにされた



「ダリューンの声って、ときどき近所迷惑ですよね」

「迷惑なのはおまえだ!おまえ!謀反だぞ!!」

「違います、仕打ちです、仕返しです、復讐です」

「かわらんではないか!」

「ま、まぁまぁ」


彼女の清々しいまでの言葉に、今では私もダリューンも慣れてしまった

ダリューンも、はじめの頃と比べるとだいぶつっかからなくなった



「すまないな、ゴホッ…つい驚いてしまって」

「殿下!謝る必要はありません!」

「そうだったんですか、あ、じゃあ…お菓子ください」

「お菓子、か?」

「なんだ、小腹でも空いてたのか」

「違いますよ、そういう日なんです」

「だから、何度言ったらわかる!おまえの国の文化を押し付けるな!」

「公認ですー、ナルサスにも許可貰いましたー」

「くそ、ナルサスのやつめ」

「は、はは…あ、たしか菓子であったな…」

「全く、それで今日は何の日なんだ」

「ハロウィンという日です」

「な、なんだ…その、ハロ…ウィン?」

「………」


急に黙り込んだゴホッを、ダリューンと私は不思議そうに見た


「ジャックがお菓子をせびまくる日、です」


ああ、そういう日だったのか、だいぶざっくり説明してるように

見えるのは、私だけなのだろうか


「そんな日に、殿下を巻き込むなあああああ」


ダリューンは剣を持ち上げ、彼女を追いかけていった

あれはあれで、ねことじゃれあうような感じなのだろう


「しかし、もしお菓子をもらえなかったら…ジャックはどうするのだろう」


手に握られたお菓子を片手に、私はナルサスの元へ足を運ぶことにした




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