貴方なんか大嫌いだ!!と叫んで逃げてしまいたい。
人でも殺せそうな目付きで、目を細めて睨んでくるリヴァイ兵士長をはったおして逃亡を図れたのならとうの昔にそうしているが、生憎とそういうわけにもいかない。リヴァイ兵士長は兵士として一流で、世に生ける人類の全てにおいて一番腕が立つ。純粋な全ての能力において負けている。
そんなリヴァイ兵士長に俺は、馬乗りになられて押さえつけられている。マウントポジションをとられたかたちでいくら抵抗を試みようと、次の瞬間には殴られ殺されるのがオチだ。俺はこの人と事務会話以外したことないが、きっとこの人はいつだって無理矢理で、横暴で、最強で、だから俺は大嫌いだ。俺は、この人が、大嫌い。しばらく続いた睨みあいに、僕は根をあげてしまった。この人に勝てるわけもないのに、僕は目を逸らして呻くように口を開いた。
「兵士長、自分は、己の発言に間違いはないと思っています」
「…」
「ですので撤回も反省もできません。処罰ならば喜んでうけましょう。」
それで自分に嘘をつかなくて良いのなら安いものだ、と。
「…お前は馬鹿だ」
「はい」
「しかし、激情に任せてお前を殴ろうとした俺も、馬鹿だ」
「…」
案外しおらしくて、少し予想外だ。
「謝れ」
「…何故」
「上官に対する口の聞き方がなっていない」
「……申し訳ありません」
「ああ。俺も悪かった」
そう言って頭を軽く下げられた。拍子抜けした。しかし、僕の上に以前として馬乗りになっている状況は変わらない。なんなんだ、一体。
「いくら巨人どもを倒すという理念を掲げていても、確かに、個人の感情まで兵団が操作する義理はない」
「はい」
「だから俺はお前に何も言わない。」
「…はい」
「お前の言う通り、捨て駒のごとく部下を扱うわけにはいかない。その件においては俺も納得していない。今度、エルヴィンに掛け合ってみよう」
「…はい…」
段々と声に覇気がもてなくなる。ああこの人は、俺が思っていた以上にまともだった、てっきり他の気違い共と同じだとばかり…うん、ほんと情けない。僕はこの人を見誤っていた。急に、不甲斐なさと申し訳なさで感情が包まれる。眉を八の字にして黙った俺をみて何を思ったか、リヴァイ兵士長は少し考える素振りを見せた後に、俺に問いかけた。
「なァ、名前よ」
「…何でしょう」
「お前はサラサとできていたのか」
「はっ?」
一瞬、何を聞かれているのかわからなかった。
俺が目を丸くしていると、肯定と受け取ったのかリヴァイ兵士長が眉間にシワを寄せた。いや、その、誤解だ。
「お前がそこまで兵団の方針に反発するのは、サラサの件があったからだろう」
「…ええまあ…間違っちゃいませんが、あくまでそれはきっかけです、以前から囮を使っての効率化などおかしいと思っていました」
「しかし、サラサをやられた時のお前の悲しみは、尋常じゃなかったな」
「そりゃ、長年連れ添った幼馴染みが…目の前で、仲間に見捨てられて巨人に食われてたら、誰だって…そうなり、ます」
「お前はサラサにキスをしていたぞ」
「ああ、そりゃ頬にでしょう。家族に対する挨拶です、それほどサラサは自分と近い人間でしたので」
「だが…」
ウン?この人は、何が言いたいんだ?違和感を感じて訝しげに眉を潜めても、リヴァイ兵士長はまだ食い下がった。俺はうんざりしてしまい、また、いい加減にリヴァイ兵士長の乗っている俺の両足が痺れてしまったため、早く話を終わらそうと口を開く。
「兵士長。俺は、あくまでサラサのこと友達としてみていますよ、そりゃサラサを失った悲しみは大きいですが、個人的感情で兵士長に反抗したわけではありません、明確な意思をもってのことです。…そもそも、サラサは男ですよ、兵士長がいう恋情など、持てる筈もありません」

言い切ると、兵士長は一言「…そうだな…」と言ったきり黙って俺の上から退いた。良かったと安堵したと同時に、兵士長の見せたとても悲痛な顔が少し、心に引っ掛かった。

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