友達にジャンというやつがいる。とても素直にひねくれたヤツで…いや、現状を認識して諦めるのが早い上に、自分に素直だからこうなってしまったのだ。子供じみてるようで大人で、大人びてるようで子供だ。
俺はそんなジャンがだーいすきである。馬鹿って、構いたくなる。隣に座るジャンの髪の毛を文字どおり掻き回してからジャンの非難を無視して問う。
「ジャン、後悔してねえんだよな」
幼き頃の俺はジャンに言われるままに、訓練兵団へと志願した。馬鹿正直なジャンは、一番最初の洗礼から教官相手にやらかしていて、笑えない状況なのにひきつった笑いが出てきて俺も教官にどやされた。苦楽を共にした…なんて格好いい言葉で片付けられない。ただの腐れ縁で、二人ともが互いに磁石みてえにくっつきあってるだけだ。しょうもない。
「後悔とか、今更だろ」
一瞬何のことかと思ったが、さっきの問いの答えだと気づいた。
俺はそうだなァと相槌を打った。顔がニヤニヤするのは、仕方ないことだと思ってほしい。あ〜あ、コイツ、殺してえな。俺たちは近い未来100パーセント確実に巨人に喰われるだろ、どうせな。巨人にコイツを喰らわせるぐらいだったら、俺が食べるよ。俺が、この馬鹿の肉を最後まで、食べるよ。
「ジャン」
「あ?」
「愛してるぜー」
「何言ってんだよ。変なもんでも食ったか」
うるせえなァ。殴り殺してキスしてやろうか。


このごろジャンの様子がおかしいなァと感づいていた。悪い予感しかしなかったから気にしないようにしていたが、ジャン大好きな俺としてはそうすることもできねぇもんで。ついついジャンの視線の先をたどると、そこには常にアッカーマンがいた。何度も、何度もこの光景を見ちまって、クソ、とそのたび舌打ちした。
そんでこないだの実習の時。アッカーマンに話しかけていたジャンの、赤く染まった頬をみてしまった。俺が初めて見るジャンを、寄りによってアッカーマンとセットでみてしまった。
チリ、と。
何か辛いものを食べたときのような、泣きたくなる気持ちになった。感傷的な感情が俺を包んで、息が苦しくなった。酷く嘔吐感が込み上げて、目眩に倒れてしまいそうだ。俺は目を伏せた。
「おい名前、どうしたんだよ、大丈夫か?」
「…大丈夫だ。」
はァ。心配そうなコニーの声も遠くに聞こえた。俺は大丈夫じゃなかった。だって俺は、ジャンがだいすきなんだぜ。
性的な意味なのか?友情なのか?馬鹿な自問自答だよ。そんなん意味ねェよ。だって、俺だってわかんねぇよ…
いや嘘だ。
そう、そうなんだ。気づいてたよ、俺はなァ…ただ笑いあってるのが性に合ってると思ってたんだけどなァ。どうやら、だいぶ沈んでいて、もう自力じゃ浮かべなさそうだよ。死んだら、殺してやるからな…、嬲り殺して、食べてやるからな、ジャン。

大好きなんだよ。なァ。

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