※原作約10年前
※オンリービューティー続編


人だけが流した血の海を歩いていた。

「リヴァイー?俺だぞ世界最強の名前さんが呼んでんだぞ何処だ返事はぁあああ?」

大声と叫ぶの中間ぐらいの加減でリヴァイを呼びながら歩く。森を木霊して帰ってくる声はどこか幼いガキの頃のようで。とりあえず野生の勘で進むものの、障害物が邪魔で捜しづれぇんだよクソが。
通常の三倍の長さはあるサーベルを背負っていた鞘から抜き、右手だけで気怠く構える。歩く時持ってると邪魔だから鞘に戻していたが、もうこのサーベルで数えきれない程障害物を斬り捨て多少斬れ味も落ちた。まぁ問題ねぇけど。
さて、と目標を見据えて一躍で距離を縮める。そこから跳んでは障害物の肌に自分の左手の指を食い込ませ、そこを軸にまた跳んで駆け上がって行く。障害物の首後ろまで来た所で、初めて大きく反動をつけサーベルを振り切った。次いですぐ刃を翻し、弱点部を精密に抉り取る。
その間、約一分。

落ちながらサーベルを背中に戻し、左手の指についた肉片を払い落とした。
色々試したが、これか脚を先に落として強制的に転ばせてから首後ろを狙うのが一番速かった。そっちだとサーベル二回使う分刃が傷むのが早そうだから、今は基本クライミングしてる。人の頭蓋骨破壊出来る程度の握力持っててヨカッタナー。

あーあ、このたった数十分で随分と障害物崩しも慣れたもんだ。俺平和主義なのになぁ。それもこれもリヴァイが消息不明だからいけない。
正確には今作戦真っ最中らしいけど、俺の勘がリヴァイ死にかけると言っていて、一般人は危険がどうとか止める兵団を俊足で振り切って壁を越えてリヴァイの行ったらしい所に来てみりゃ兵団の姿は何処にも無し。残ってたのは夥しい血液だけ。あ、いや一組の腕だけ見たか。で、俺がリヴァイを捜すの邪魔する障害物だらけ。
俺の勘って、本当スバラシイ。
背筋がざわつかないからまだ本格的に生死のピンチじゃないだろうと自分の勘を慢心してゆっくりと進んでいると、やっとリヴァイを見つけた。



「なにしてんの」

自分でも初めて聞く程声は低く冷めていた。
気付けば障害物もといリヴァイを食おうとしていたゴミでクズでカスで下等生物で存在が罪なその生き物は倒れ、消えていた。けどそんな事はどうでもいいから俺はもう要らなくなったサーベルを邪魔だとその辺に放った。

「お前がそんなになる程の任務じゃねぇだろ。あ?何で平和主義な俺が出向かなきゃ行けない、お前が死にかける事態になってんだよクソが」

たった一人愛しいはずの満足に動くこともままならないボロボロの幼馴染の腹を死なない程度に蹴りつけた。為す術もなく咽る、その弱った俺のかわいい狂犬を可哀想と思う暇もなく、無駄に宜しいこの頭は惨状の理由なんて最初から気づいていて。
その肩口を骨に支障がないギリギリのラインで踏みつけ思いきり見下す。リヴァイ、お前は本当に馬鹿だね。

「救おうとした部下、どうせ死んだんだろ?無駄じゃん。意味ねぇじゃん。犠牲増えただけだし何よりお前って貴重な戦力失いかけて人類に大打撃じゃん。なにしてんの?他人の為に死ぬんじゃねぇよ」

俺は誰より強いから、俺の為にお前が死ぬことは無い。
だったら俺以外の誰かの為にも死ぬなんてするんじゃねぇよ。お前はお前の為にだけ死ね。

「っ…ああ、お前が来たから、台無し、だ」

あ?
言葉の意味を考えて、はじき出して、リヴァイから足を退け、宙を睨んだ。あー、そーゆー事。成る程俺の勘違い。リヴァイは馬鹿だけど、部下の為に自分の命を落とす程じゃない。それで自分が死んだら結局未来の被害が大きくなるって解るぐらい自分が強い自覚はある。
ついでに今死んでたらリヴァイは俺の為に…訂正。俺のせいで、死んだって事だった。

「潰す」
「お前は屠る、だろうが。やめとけ、お前が死んだら誰が人類最強らしい俺を助けんだよ」

さっきまで俺の足で、口で傷つけたリヴァイが、なのに俺を目に映して安心しきったように笑うから。

「名前、帰るぞ。派手に暴れやがって。どうせもうお前の存在、上にバレたんだ。こんな事二度と誰が起こせるってんだよ」

幼い頃から変わらないいつもの調子で俺の名前を呼ぶ時だけその声音を和らげるから。


「……リヴァイに免じて、兵団屠んのはやめてやんよ」

ただし帰ったら、兵団がもしリヴァイを殺したら俺が人類を滅ぼす事を教えてやらなきゃなんねぇな。俺って平和主義なのに、なぁんでわざわざ喧嘩売るかね人間は。

きっとリヴァイはこの一件でさえ自分にもっと力があればとでも思ってんだろうから、俺はこれ以上何も言う事は無かった。
代わりに俺がこの後兵団にて起こした騒動は何十年も語り継がれるものとなる。それから俺は宿舎なんかにも完全に出入り自由になり、リヴァイも待遇良くなり、俺は俺でその先もしばらくは平和に暮らせていたので良しとしよう。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -