rabbit 12


このスピードなら5日とかからず海の国につきそうだ。焚き火を挟んで俺と兎京は座る。兎京は大切そうに箱を抱えていた。


「はぁ、疲れた…。」
「んな速く走ってればな。」
「バーカ、スピードはいつもより遅いから、あんたに合わせてあげたの。」
「ほう。」
「本当だよ?」


……そのけだるそうな上目遣いにキュンとする俺、マジでキモいと思う。


「お前ボキャブラリーバカしかねーのかよ。」
「はぁ?」
「かわんねーな。」
「……そっちも、無愛想な顔は変わらないね。」


変わらない、立場は変わっても俺に対する小生意気な態度は変わらない。


「でも、見かけだけはよくなったんじゃないの。あんたにだけは惚れないけど。」
「俺だってお前には惚れねーよ。」


もう惚れてるから、って言えたらなぁ。


「女なんてよりどりみどりのキミからしたらブスですよどーせ。」
「お前は見かけより性格ブスだ。」
「…バカだもんね、私は。」
「はぁ?」
「私が性格ブスならキミは最低だね。」
「そりゃ悪役には最高の誉め言葉だ。」
「減らず口。」
「その台詞バットでそのまま打ち返すぜ。」
「あんた女の子からはクールでかっこいいとか言われてたけど全然クールじゃないよね。」
「女共が勝手にそう思い込んでただけだろ。」
「本当は無愛想で、負けず嫌いなくせに。」
「!」
「羨ましいよ…。」


羨ましい…?


「強くてかっこよくて皆に愛されてて…、いつだってキミは誰かに必要とされてる。」
「どうした……?」
「私が抜け忍になったって、きっと誰も追いかけてくれないし、特別な措置だって出ない。抜け忍抹殺の命令が出て終わりだよ。」
「お前何言ってんだよ。」
「キミと違って私は家族もいるのに、キミより何もかもが劣ってる。獄寺やツナが中忍試験落ちちゃったのだって私のせいだ。王冠一つ満足に運べない。」


何だ…?アカデミーの頃のこいつはいつもニコニコ、底無しに笑ってたじゃねーか。


「キミの言う通りだね、カッコ悪い…キミにこうやってぐちぐち八つ当たりしてさ…。私はバカだよ。右手を落としたのは私の不注意なのに。」
「お前、もしかして俺の家に荷物を届けに来たときのこと言ってんのか?」
「覚えてたんだ、意外。」


当たり前だ!俺はあのときやっとお前に惚れてるって自覚したんだから…!!


「俺がお前にバカだって言ったのは右手を落とした事じゃない、何で忍をやめたんだって意味だ!」
「印も組めないのにどうやって戦うの、今日だって」
「どんなに辛くてもお前は笑うだろ。…兎京だったら何だって出来たはずなのにお前は忍を諦めたから、だからバカなんだ。9班のやつだってお前に救われてたはずだ、俺だって」
「弱いやつは足手まといだよ、キミだって何度も言ってたじゃん。」
「お前とナルトは同じだったんだよ。ドベでウスラトンカチなナルトが頑張るから俺達だって負けたくねぇと思って頑張った。兎京が笑うからあいつらだって笑ったんじゃねーかよ。」
「何言ってんの?お前の笑顔は回りを笑顔にさせる、とでも言いたい訳?」
「そうだ!」


あ、俺何でこんなべらべらしゃべってんだろう。


「お前の笑顔は必要だった。」
「は?」
「お前が俺の隣にいたら俺はきっとーー」
「私とキミは友達未満じゃん。」
「俺は」
「バッカじゃない、キミにそんなこと言われたって気休めにもならない。」
「……。」
「でも……、ありがとね、サスケ。」
「!!」


名前を呼ばれた、いつものようにニッコリと、まではいかないが笑った。


「そんな必死になるなんて、結構イイヤツじゃん。見直したよ。」
「兎京…。」
「サスケの言う通り、何だって出来るような強い人になりたかったな。」
「…ー。」





俺はやっぱり、兎京が好きだ。

俺限定かも知れねーが、兎京の笑顔は人を幸せにさせる。



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