rabbit 32
*兎京

あれから一年、


「ん……」
「兎京!」
「よ、よかったぁ〜!!」


今までの事は全部夢だったのだろうか。真っ白い天井をバックに獄寺とツナが私を心配そうに見下ろしていた。


「なんで、木ノ葉に…?」
「それはこっちの台詞だ!任務で十代目との待ち合わせ場所に向かったらお前門に寝かされてたんだぞ!」
「大丈夫?どこか痛い?ぎ、義手の方は大丈夫!?」
「サスケの奴、ひでえことしやがる…!」
「!!」


サス…ケ……やっぱりあれは夢じゃなかったんだ…!!


「だめだよそんな急に起き上がったら!」
「綱手様のところにいかないと!」
「綱手様なら午後に面会に来るって…」
「早く、早くしないと、」
「落ち着けよ、もうじきお前の親も来る。安静に」
「サスケを止めないと!!」
「「!!」」





思い出した。

「お前は元の世界に戻れ。」
「え……?」
「自分勝手で悪ィ、でもこの先お前を守っていける自信がない。」
「何、言って……」
「お別れだ、兎京。」






大蛇丸を倒したサスケはいよいよイタチさんへの復讐に動き出した。そしてアジトを出た時私はサスケに気を失わされて………。


「バッカじゃない…、今更元の世界になんて戻れる訳ないじゃん…。」
「兎京…?」
「獄寺、ツナ…私サスケの事が好きなの。」
「えっ!?」
「お、お前らアカデミーでも全然…」
「うん。でも王冠を運ぶ任務の時偶然会って、私はサスケの事が好きになった。サスケは凄く優しい人だよ、ナルトやサクラの事を大切に思ってる思ってる。今だって!」
「ちょ、落ち着いてよ兎京!サスケくんは抜け忍だよ!?」
「それにお前の事を誘拐したって話じゃねーか!」
「誘拐じゃない、駆け落ちしたの。」
「「!?!?」」


二人は目を見開いていた。それもそうだ。まさか全く仲の良くなかった私とサスケが駆け落ちなんて夢にも思っていなかっただろう。


「サスケが好き。でも私はツナや獄寺や…木ノ葉の里だって大好きで…二人を裏切れない…。だからサスケは私の為に悪役を買って出たの。」
「……。」
「マジかよ…。」
「大蛇丸はサスケによって倒された。次はサスケはイタチさんを殺す。それだけは止めないと。」
「大蛇丸を…!?」
「……分かった、綱手様を呼んでくる。」
「ツナ…!」
「ただし!勝手にウロウロしたりどっか行かないこと!いいね?」
「…うん。」
「獄寺くん、兎京のこと頼んだよ!」
「はい!」


ひゅんっ、とツナは木の葉を残して消えてしまった。


「…いつの間にかすっかり立派になっちゃって…。こんな忍者らしいツナを見たのは三年振りだよ。獄寺はまだツナの為に上忍への昇格断ってるの?」
「兎京。」
「………はい。」


まずい、獄寺めちゃくちゃ怒ってる。腹黒い山本よりもずっと深く怒っている様だ。


「俺達がどれだけ心配したと思ってる。」
「ごめん…。」
「熊の時も、サスケの時も、今回だって…!どれだけ俺達が心配したか分かってるのか!?誘拐されたって聞いた時俺達はどれだけ…どれだけサスケを恨んだと思ってる!!何度俺達は…!!」
「獄寺…。」
「バカ野郎っ!」


ぎゅっ、と獄寺に抱き締められた。懐かしい匂い。昔はよく何かあったらこうやって抱き締めてくれたのにいつの間にかしてくれなくなったね。


「生きてて…よかった…。」
「うん…。」


獄寺は同い年だけどいつも私の手を引っ張ってくれるお兄ちゃんみたいな存在だ。サスケに抱き締められるとドキドキする。獄寺に抱き締められると
きゅっ、と心が暖かくなるんだ。


「ごめんなさい…。」
「…分かればいい。」
「………。」
「……なぁ、兎京、お前が本当にサスケが好きなら…例え敵だったって俺はお前たちを祝うよ。抜け忍でも構わねぇ。兎京が笑って過ごせるなら誰だって構いやしねーんだ。でもよ、こんな風に何も言わずにどこかへ行くのはやめてくれ。」
「うん…。」
「笑顔で、行ってくるって言え。そしたら俺はどんな邪魔が入ってもお前達を送り出すから。」
「うん。」
「十代目も、山本も同じだ。いいな?そこんとこ忘れるなよ。」
「うん。」
「…ずっと家族だ、俺達9班は。」
「…うん!大好き獄寺!!」
「ああ!」


獄寺は目を細めて笑う。私も笑った。
この光景を見たらサスケはヤキモチを妬くかな?それで不機嫌になってしまうかもしれない。でも、大切なんだよ。サスケがナルトやサクラを思ってるのと同じように私も獄寺やツナが大切。

サスケ、こんなに大切なつながりを持ってるのに、それがどれだけ大切か分かってるのに、どうしてそのつながりを絶とうとするの?


一年前は復讐なんてくだらない、やりたければ勝手にすればいいと思ってた。でも今は違うよ。サスケの事が大切だから止める。





賭けてもいい。

復讐の後、サスケは必ず後悔する。



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