Mermaid 68
真珠の里を出て早くも9日。

海際には里が多いのか、2、3日に一回は里を見つけていた。里で旅をより面白くするため噂話の情報収集をしながら道を進む。現在の目的には北にある「月影山」だ。
月影山は鋼牙達が育った山で、灰羅と一連の騒動があった山。海岸をしばらく歩いたところでかなり近くまでやってきていた事に気付き、特に用もないので月影山を寄っていくらしい。


「月影山見えねぇな…」
「まぁそんなデケー山じゃねぇからな。」
「この調子だとあと12日くらいでつくな。」
「12日か…すぐに着きそうだね。」


里はまだぼんやりとしか見えないが夕方にはつくだろう。


海は至極穏やかである。


「海岸沿い歩いてもう何日だ?」
「一月くらいじゃねーか?」
「山が恋しいだろ。」
「な、なんだよ悪いか!?」
「山かー…森と川の音久しく聞いてないね。でも月影山に行くにはこの道がいいんでしょ?」
「ああ。萩丘村で右折したらすぐだ。」
「はぎきゅうそん…?すごい名前だね。」
「あそこのおはぎはマジ美味いぜ!」
「へぇー…おはぎか…」


風も穏やか。のんびり、と言った言葉が似合うだろう。


「綺麗だなー…やっぱ。」
「サハラは海が好きだな。」
「人魚だからね…。」


いくら眺めていても飽きない。一秒一秒ごとに景色が変わる海をぼんやりと眺めながらつぶやいた。


「竜宮城とかあるのかな…」
「「「竜宮ーっ!?!?」」」
「…なんだよ。」


そのつぶやきに反比例するような大声で3人は叫ぶ。


「今竜宮城っつったよな!?」
「ファンタジックだな〜、サハラがんな事言うなんて思わなかったぜ!!」
「ファンタジックじゃないでしょ。だって妖怪に魔法だよ?信じずにはいられないでしょ。オカルトも。」
「竜宮だぞ!海の中にある御殿だぜ!?息できねぇよ!」
「…そーゆー事言う?」
「サハラもカワイイとこあるんだな!」
「ははは!!、竜宮な〜。話にはよく聞くけど…まぁ実際ありえねぇだろ。」


笑う3人にサハラは小さくムッとする。


「何だよそれ…。じゃぁもし竜宮城があったらふんどし一丁で逆立ちして里一周ね。」
「いいぜ!乙姫とかもちゃんといたらな」
「男に二言はないな?…絶対見つける!!」
「あぁ!…てゆーかめずらしな、サハラがそんなムキになるなんて。」
「あ……確かに。なんだろう、絶対ある直感がする。」


(そしてそこには、何か特別な贈物が。)



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