Mermaid 5
早い事で私ももう17だ。そろそろ子供を身篭らないと本当に私の一族は滅亡してしまうなぁ。

そんな事を思いつつ私は数年住んでいた村を出て北に向かっていた。何故北に行くかと言えば今日は北風だから。理由なんてそんなものだ。
生きる「目的」が私にはない。


「はぁ…」


季節は木枯らしの吹く初冬。寒くて歩くのもかったるい。
こんな時こそ私の魔力を使おうではないか。


「式神、灰羅!」

どろん!

「また馬がわりかよ。」
「あんた私に屈服されたんだから仕方ないでしょ。」
「フン。」


灰色の毛を持つ狼妖怪の悪霊、カイラ。カイラはロウゲツというボスに所謂謀反を起こし背信。しかしそれは失敗しロウゲツに殺されそれを怨んで悪霊になったというなんともアホな悪霊である。

カイラにまたがりのっしのっしと北に向かった。


「ギィィイイ〜!」

「きやぁあっ」
「くわばらくわばら…」

「ん…?」


ぼーっとしていたので気付かなかったがそう言えば空の方から嫌な音がする。近くに天守閣も見えた。どうやら近くに城がありそこに妖怪が住んでいると見た。

しかし城ならなおさら退治屋を雇っている事だろう。


「灰羅、そろそろ昼にしよう。」
「ユッケがいい。」
「式神が牛肉要求するな!」


薪を集めて魔術で火を付けた。


「アギ」


ぶおっ!

火炎の魔術、「アギ」である。
適当に肉やら野菜やらを串刺しにしたそれは串刺しバーベキュー…という事にしておこう、折角などで焼き芋も作った。旬から少しずれてしまったがまだ秋が名残惜しい。



「ん…何か嫌な予感がしてきた。」
「灰羅の予感は当たらないからな。」
「いや、これマジ、マジな感じ!」
「お、そろそろいい感じだな。」
「…………。」


カイラは険しい顔をしている。しかしカイラの予感が当たった試しはない。またいつもの妄想だと思っていたが私はこの後人生の分岐点ともなりうっただろう大きな出会いがある事など、バーベキューを楽しんでいた私には知る由もないことだ。


「ギィィイイ〜」

「うるさ。」
「響灘だからな。」
「ヒビキナダ?」
「あの妖怪の名だ。」
「ふーん。灰羅ってそーゆー雑学は多いよね。流石年寄り。」
「ご年配と言え。つか、敵の情報を得る事はすなわち生きるための知恵となるのだ!」



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