Mermaid 18
翌日
私は決意した。鋼牙はきっと灰羅の事を話さないときっと彼は納得してない。だから、全てを話そうと。
そう思っていたのに部屋には誰もいなかった。
ガラガラ…
「おはよー!」
「ねみーよ鋼牙寝させろよー」
「…おやすみなさい。」
「起きろー!!!」
スパコーン!!!
なんなんだろうこれは。
てゆーか…
「どなた?」
「八角です!」
「銀太です!」
「サハラの事説明しておいた!満場一致でOKだったぜ!」
「ま、あれだけ褒めたたえればなー」
「鋼牙見る目だけはいいからさ。まぁ前向きに検討してくれよ。」
と、いうとさかハゲ頭の八角。銀太もそれににっこりと笑っている。一体二人は鋼牙からどんな説明を聞いたのか。
「期待されても困る。」
「ほら謙虚!」
「ちょっと黙ろうか。」
昨日の夜にはいなかったし、この朝までに二人がやってきたのか。よく解ったな。しかも大分慣れているようだ。喧嘩なんかしてたら流石に起きる。
――てか、人がきてこんなガヤガヤしてたのに私起きなかったのか、無防備というか…ダメだな。
「つー訳で海に行くぞ!」
「どーゆー訳?」
「早く真珠の里に行きたいんだよ!」
「真珠の里?」
「幻の黒真珠があるっつー里!ずっと北に行くとあるんだって!!さっきあった女将さんが教えてくれたんだ!」
「なんだよ幻の黒真珠って…」
「ひとつなぎの大秘宝かドラゴンボールで十分だろそんなの…。」
「何言ってんだよバカか!男にはなぁ、夢と浪漫が必要なんだよ!!」
「うるさいよ。」
もう、早く灰羅の事を言って白黒つけたいのに全然そんな雰囲気じゃないじゃん。
「とにかく行くぞ!!」
「行ってらっしゃい。」
「サハラもだぞ!」
「はぁ…?」
「サハラは仲間じゃないっつっても俺はサハラの事仲間だと思ってるから。」
「…………、ごめんね。」
「え…?」
………よし、今だ。全てを打ち明けよう。
「私」
ぎゅっ!!
「……?」
「何があったかしらねーけど…俺はサハラが好きだぞ!!」
何の話?
「仲間だぞ!!」
「鋼牙…」
「ししっ」
鋼牙はにっこりと笑ってる。鋼牙が言う事は限りなく的外れだけど私を心配してくれて…嬉しかった。
「さぁ海海!」
「ったく、しょーがねーな!」
「よーし行くぞー!」
「「おー!!」」
こうして強引な狼達により私は海に連れていかれるハメになってしまったのだった。
また、タイミングを逃してしまった。
これから海か…遊ぶんだろうな。ならこれが最後の思い出だ。思い切り遊んで、夜になったら彼らに打ち明けよう。
普段はあんなムカつく奴だけど灰羅は私にとっては大切な式神。ずっと前から私と一緒に居てくれた唯一の家族みたいな存在なんだ。
灰羅を捨ててしまえば何の問題もなく鋼牙の仲間になれる訳だけど私にはそんな事出来ない。
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