Mermaid 152
あれから更に数日が経ち、私達は月影山のふもとまで来ていた。ここを右に曲がるとすぐに着くらしい。
ここは、ハギキュウソンというおはぎが美味しい村だそうだ。





萩丘村

ぱくっ

「!…、ヤバい。」
「だろ!?」


流石!!絶妙の温度調整をした暖かな粒々おはぎ、しかしそれは柔らかく甘すぎず甘い神妙とも言える香りが口内を一蹴――。

これは素晴らしい…!!!


「そーれっ!あはは!」
「わんわん!」
「1号ナイス!」
「2号だって負けねーぞ!」
「ワォオーン!」


銀太と八角は余程山が嬉しいのかウルフ1号、2号と共にフリスビー。


「クゥーン」
「ん、おはぎ?」


そして3号は私達の所にいる。首を振っている所からしてどうやらおはぎが欲しい訳じゃないようだ。


「わんっ!」
「!、あったかい。」
「クゥーン」
「えー!ずりーぞ3号!!」
「バウバウ!」
「何だと生意気な!!」
「狼の言葉解るの?」
「わからん、インスピレーションだ!」


そんなもので喧嘩出来るなんて凄い。


「こんな上の方まで山登ったの初めて。」
「まだ中腹だぞ!?」
「山登った事ないの。何だかんだでいつも海よりにいたからね。」
「人魚だもんな。」
「今思うとそれが理由だったのかも。」

私もしばらくしたら鋼牙が山を恋しく思った様に私も海が恋しくなるのかな。定住するなら近くに海と山がないとね。そうだな、軽井沢辺りなんてどうだろう。
―――なんちゃって。


「こんな上から見る海もキラキラ綺麗だろ?」
「うん。」
「冬は空気が澄んでるから地平線までくっきり見えるな!」
「そうだね。」
「っでさー、俺前から言いたいことあったんだけど!!」
「あぁ、だからなんか早口でそわそわしてたんだ。」
「そ、そわそわなんかしてねーよ!男はいつでもどっしり構えてんだ!」


いや、そわそわしてたよ。
でもそれは彼の気持ちを組んで言わないでおこう。


「マジ最高の口説き文句だからな!ちゃんと聞けよ!」
「うん。」


とか、今から最高の口説き文句言うぞ、なんて言ったらそれこそ台なしなんじゃないだろうか。まぁいいや。


「あのでっけー海って3億6000万平方キロメートルあるんだって!」
「へぇー。」
「だから億は3億6000万平方キロメートル分サハラが好きだ!!!」
「は?」
「え!!!?!」


鋼牙は私のリアクションを見て心底驚いたような顔をしている。
ごめん、意味わかんないその口説き文句。



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