Mermaid 82
浦島太郎Side

しばらくすると、亀はぽかりと水の上に浮かんだ。するといつの間にかもとの浜辺についている。


「亀さん、ご苦労様でしたね、どうもありがとう。」


太郎はひらりと丘へ上がった。


「浦島さんさようなら、ごきげんよう。」


そういい亀は水の中へ沈んで行く。
太郎は浜辺に立って辺りを見回すと、辺りの様子が何となく変わっていたことにきづいた。

少し変だとは思ったが、
"三年の間に何かあったのかもしれない。"
そう言い聞かせ浜辺を歩く。


「……あれ?」


だけど、会う人も会う人も皆知らない顔。そして皆おかしな顔をして太郎を見つめていた。


「これはどうしたんだろう。一人くらいは知っている人がいそうなものだ。まぁ…なんでもいいから早くうちへ行ってみよう。」


急いで家へ向かう。するとそこには


ザァッ…
「んなっ…!?!?」


長い草がボウボウと生い茂っているだけで家等影もなかった。
もちろん、彼のお父さんやお母さんもどこにいるかさっぱりわからない。


「不思議だ…一体何があったんだろう…?」


太郎は呆れ返ってただただそう呟くばかり。
するとそこへおばあさんが一人杖をつきながらよぼよぼと歩いてきた。
太郎はすぐさま声をかける。


「もしもしおばあさん、浦島太郎のうちは何処でしょう?」
「浦島利助の家なら反対側の……」
「り、利助じゃなくて浦島太郎ですって!」
「浦島太郎…!?何をおっしゃっているんですかあなたは…私はこれで107になりますがそんな人は聞いたこともありません。」
「そんなことはありません!!確かにこの辺に住んでいるはずです!!」


太郎はやっきとなってお婆さんを怒鳴る。
お婆さんは腰を伸ばして暫く考え込み、


「あ、」


やっと何かを思い出したようだ。


「そうそう、浦島太郎さんか。あの人ならもう三百年も前の人です。何でも私がまだ子供の自分に聞いたことだが、船に乗って釣りに出たまま帰って来ないそうな。多分竜宮へでも行っているだろうという事です。そんな大昔の人を聞いて何にするのだね?」


お婆さんはそう告げ、また杖をついてどこかへ行ってしまった。
浦島太郎はびっくりして暫くの間声すら出せなく、そのまま静止する。



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