Mermaid 30
それから時は流れ、灰羅と別れて約12日。宿から7日後のあるお昼時の刻、辺りは昼だというのに、空は妙く暗かった。


「………天気悪いね。」


ぶるっ、と体を震えさせながら呟く。マントから出ている耳や鼻は赤く、冷たくなっていた。
息も真っ白で、初冬であるにも関わらず、北にいるせいかまるで真冬のように寒かった。


「寒そうだなサハラ、やっぱり衣買ったらどうだ?あと靴とかマフラーとか手袋とか。」
「私手袋しない主義だから。それにそんなもの買ってたらすぐにお金無くなってしまう。女将さんからもらったコレがあるし大丈夫。」
「金の前に、自分の体を大切にしろよ。」
「……」


確かにそれは一理ある。
銀太の優しさは嬉しいがやはりあまりお金は使いたくないのが本音だ。


「見てるこっちが気が気じゃねーよ。」
「その言葉、そっくりそのままお返しするよ。」
「「「え?」」」
「3人共季節感無さ過ぎ。見てるだけで寒くなる。」
「そうか?」
「あんま寒くねーしな。」
「いつもそうだぞ。」
「今の季節は冬で、鋼牙達の恰好は夏。変。」
「ばっさり言うな。俺達は妖怪で狼!寒さには強いんだよ。」
「…差別。」
「なんでだよっ!」


そんなこんなで騒いでいると、


「っ…!!」


ひんやりと冷たいものが首筋に流れた。
雨かと思い空を見上げる。

すると、


「雪……?」


想像もつかない程真っ白で綺麗な雪がふっていた。


「わ………綺麗だし白い。」
「雪なんだから当たり前だろ。」
「うん、そうだよね……。」
「?」

(今まではこんな風に雪を眺める余裕なんてなかったから。)

「これ、初雪?」
「そうじゃねーか?」
「やっぱ北の方は雪降るの早いな!月影山はもう真っ白かもな。」
「かもな!」
「あ、例の。今度行ってみようか、せっかく北に来たんだし。」
「月影山か…懐かしいな。」
「………楽しみだね。」


切なそうな鋼牙の微笑みにサハラは穏やかに言葉を紡いだ。


「しかし雪か…どーりで寒い訳だ。」





真珠の里まであと少し。





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