vampire 630
*ツナ

「獄寺くん!大丈夫!!?」
「獄寺〜」
「十代目に、野球バカ…。俺は大丈夫なんで早く日和の元へ急ぎましょう!」


日付ももうすぐ代わる頃だろうか。
獄寺君から電話があって3時間後、宝がいなくなってから恐らく4時間後、俺たちはようやく獄寺くんのところに辿り着いた。
山本と俺の二人で、なんとかボロボロの獄寺君を車まで運ぶ。


「さ、早く乗って」
「雲雀…!?」
「運転するのは僕なのに…」
「骸!?」
「獄寺くん!ほら、これスッポンドリンク!これのんで!」
「あ、ああ、サンキュー笹川」


骸が運転する車には、助手席に雲雀さん、最後部席には山本と京子ちゃん、そして真ん中には俺と獄寺くんが座った。
座って1秒も経たないうちに車はも急発進し、猛スピードで夜の町を駆けていく。

獄寺君から宝がいなくなったという電話があってすぐに雲雀さんに電話をして、山本と京子ちゃんと4人でこのサイパンまで駆けつけた。現地にいた骸と合流し、獄寺くんの携帯のGPS機能を使って現在位置を把握、獄寺くんの救出をして今に至る。

電話をしていたから獄寺君の様子は分かっていたものの、正直驚いた。いや、貧血とか傷が治ってるとかも驚いたけど、一番は声だ。
電話をもらった時の獄寺くんの声がやけに落ち着いてたし、また宝がいなくなってしまって…、宝を迎えに行くといいつつ、本当は死んじゃうつもりなんじゃないかと、この目で獄寺くんを見るまで疑っていたくらいである。


「獄寺くん、その…なんだか良い顔してるね。電話でやけに落ち着いてたから、俺ちょっと心配だったんだよ」


吸血鬼の血の影響で喉が渇いているためか、顔は青白い。でも、何か吹っ切れたような清々しい顔をしている。


「…まあ、ぶっちゃけ俺後少しで後追い自殺する予定だったんですど」
「え!?!?!」
「十代目は気づいてらっしゃったんですか、日和が悩んでること…」
「!」


びくっと心臓が震えた。
うん、俺は知ってた。本当は…何よりも先にこのことを謝らなくちゃいけなかったのに…、君に嫌われてしまうのが怖くて、つい知らんぷりをしてしまった。獄寺君に気づかれなければいいって。
懺悔の時だ。


「…ごめん、獄寺くん」
「え?」
「…俺、少し前から気付いてた。確信はなくても、違和感を感じたときすぐに獄寺君に言えば良かった…、そうすれば、宝は…」
「いいんです。いや、本当は一番近くにいた俺がすぐに気付くべきだったのに…」
「でも」
「むしろ、教えてもらわなくて良かった。そうじゃなかったら、俺のプライドはズタズタでした」
「…?」
「俺より十代目の方が日和の気持ちがわかるって、悔しいじゃないですか」


そう言って、獄寺君はにへらと笑った。

これは俺の勘だけど、獄寺君は気丈な半面、とても危うい。きっと今の獄寺君は、宝は生きていて、もう一度話をすることしか考えてない。
俺はね、こんなことを君にいう勇気はないけど、宝はきっともう…間に合わないと思う。すごく嫌な予感がするんだ。宝がもう死んでいるのかとか、そんなことは分からないけど、きっとうまくはいかない。そう思えてならないんだよ。
だから不安なんだ、もし宝と話すことが出来なかったら君はどうなってしまうんだろう。もし…死んでいたら、君は今度こそその後を追ってしまうんじゃないかな。
さっき、後追い自殺する気だったんですよ、とサラッと言っていたけど「もう死のうかな」とかそんな程度じゃなかったと思うんだ。
もし獄寺君のポッケに拳銃が入っていたら、きっと君は何の躊躇もその頭を撃ち抜いていたと思う。

嫌な予感はどんどん大きくなるばかり。
それも、ほぼ確信に近いような嫌な予感。


「十代目?どうしたんです、急に黙って…」
「え!?そうだったかな」
「俺は大丈夫ですよ」
「うん…、信じてるよ」



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