vampire 596
10/20 水曜日 放課後

*ツナ

クラスメートがまた一人減って、2日がたつ。
18日の夜、隣の黒曜高校の男子生徒二人が何者かに襲われ病院に緊急搬送された。首筋にあった妙な2つの斑点を除き、怪我一つなかった。それにも拘わらず失血死寸前だったという。
そして昨晩、19日の晩にも一人の犠牲者が出た。クラスメートのナツメだ。皆一命は免れたが、街には謎の吸血鬼事件として騒ぎになりつつある。


「山本、獄寺くんのお見舞いがてら、ナツメと黒曜生二人組に会いに行かない?」
「ん、あいつら目覚めたのか?」
「らしいよ、リボーンからメールきてた」


今朝、学校では緊急全校集会があった。上記の件の注意勧告で、夜間の外出は控えるようにとのことだ。
宝も学校に来ていない。昨日獄寺君のお見舞いに行ったらしくて安心したけど、やはり宝の様子がおかしい。何かあったのなんて一目瞭然だった。


「犯人、宝なんかな…」
「うん…可能性は高いと思う…」


宝を生き返らせたのは間違っていたのだろうか。今誰より苦しんでるのは宝だ。人を襲ってしまう自分が憎くて憎くてたまらないだろう。でもそれを抑えられない。
たった一人で孤独と罪悪感に耐えているんだ。悪いのは俺なのに、支えることも謝ることもできない。
…宝、今どこにいるの?


「獄寺ってこの事知ってるのかな」
「事件が起きてから会いに行ってないからね…。でも知ってると思うよ、これだけ騒ぎになってる訳だし」
「だよなー。オレどんな顔すればいいんだろ」
「山本が気にすることないじゃん」
「んー、でもよ、俺…なんか嬉しいんだよな」
「え?」


山本は俺の視線に気付いてないらしく、宝が生きていたあのころよりも随分と早くなった夕日を、ぼんやりと眺めていた。


「…俺、また獄寺がメソメソしてたら殴ってやろーと思うんだよ」
「えっ」
「だって、そんなの宝に失礼だろ。テメーの勝手で宝を生き返らせて、今度は宝が苦しんでるのは自分のせいだって。申し訳ないと思うなら足掻けってな!」
「山本…」
「ツナもあんまメソメソしてると俺のナックルパンチが火を吹くからなっ」
「…はぁい」


ありがとう山本。ごめん、宝。
もう二度とキミを苦しませはしないよ。そしてあわよくば生きてて良かったと思い知らせてやる。どれだけ俺らがキミを大切に思ってたか、どれだけキミが貴い人なのか、キミがきらいなキミを好きにさせてやる。

俺より背の高い真っ黒な影法師はさっきより少し元気になったように見えた。



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