vampire 583
10/12 火曜日

*獄寺

あれだけザックリ背中を斬られていたのに生きているのが不思議だ、と何度医者に言われただろうか。何も不思議な事なんてない、あれは俺の体に残っていた日和の血のおかげだ。吸血鬼としてのあいつの血が俺を護ってくれたんだ。


「ハーーーーー暇だーー」


血漿交換なう。
日和達は学校だし、仕事用のパソコンは安静にしてろと十代目に取り上げられたし、誰も来ないし、やることなくて暇である。引き出しの中には十代目が骸からあずかったDVDがあるが、骸セレクトのDVDなど見る気がしない。月刊世界の謎と不思議も読み尽くした。
もう一時間以上こうしてベッドの上で何をするわけでもなくダラダラしているだけだ。


「暇だわー」
「そう思って遊びに来たぞ!!」
「うわぁぁ!!ちっけぇ!!!」


突如現れたのは我が初代ボンゴレボス、ジョットさんである!しかも顔が近い!!


「ほんとお前はいつまでたってもガキだな」
「むむ、病床の獄寺君にはこれくらいオーバーな方がいいんだよ」
「てめぇ、何しにきたんだよ」


がらりとドアから入ってきたのはGとクリソツなガウディだ。ガウディ…だよな?いつものアホ100%みたいな雰囲気とは一変して、今日のこいつはまるで


「学校は、どうしたんだよ」
「ジョットとのんきに遊んでる場合じゃなくなったんだ」


Gそのものだ。


「見せた方が早いと思ってな」


ガウディの体がゆらめきだす。いつ変わったのかわからないくらいあざやかに、ガウディはGになった。


「おま、Gだったのか!?」
「見事な演技だっただろう」
「おまえかよ!!!よくあんな年甲斐もなくはしゃげるな!無意味に下ネタぶち込みやがって!オッサンきもいんだよ!ハゲ!!」
「そ、そこまで言うことないだろ!大体あれはジョットの考えたキャラなの!そんな本当のことストレートに言うなよ傷つくだろ!!あとハゲてない!」


自覚あったのかよ!!
なるほど、だからガウディのやろーには妙にむしゃくしゃするというか、変な親近感があったのか。


「冗談はさておき、本題に入ろう。残念だけど君達にはしばらく会えなくなってしまったんだ」
「な、何故です?死神の仕事サボってたのがばれてお咎めくらったんですか?」
「んん?いや、それはいつもの事なんだが、リングに残る俺たちの意志の力が弱くなってしまったんだ」
「!?」
「少し"縦の時空軸"の力を使いすぎてしまってね」
「縦の時空軸…?」
「あのままじゃ宝ちゃんを殺した犯人は見つからない。この捜査は警察には頼めないでしょ?それに、ボンゴレの力じゃ犯人は捕まえられなかった」
「どういうことです?」
「隼人くん、キミはあのとき犯人の存在に気づかなかっただろう。殺気がなかった。それは超一流の殺し屋か、頭のイカレたジャンキー。今回の件は後者だ。そしてそいつはカタギの人間」
「!!」
「リストアップもされない、本当にただの民間人なんだよ。それも君らと同じ学校に通うね」
「なんだと…!?!?」


山本に犯人の捜査を頼んだが何の音沙汰もない。それは犯人の尻尾すらつかめていなかったからだったのか…。確かに素人の身のこなしではなかったが、俺やボンゴレに恨みがあるどこぞのファミリーが仕掛けたに違いないと思っていたが、犯人はカタギの人間…しかも同じ学校だと?


「宝ちゃんや隼人くんたちと直接の面識はないと思うよ。殺しを頼んだ依頼主は他にいる」
「他に…」
「ごめんね、おれたちは君らが襲われたあの部屋の時間を巻き戻して、その犯人を追ったんだけど、彼が制服を脱いでる所までしか戻れなかったんだ。だから実行犯や依頼主がだれかまでは分からなかった」
「いえ…充分です。ありがとうございます」
「学年カラー的に三年生の男子だ。髪は黒髪、背は山本君より少し低いくらいだったかな」
「俺もお前等が休んでる間にどいつが犯人か教室を回って探ったんだが、何分巻き戻しのノイズがひどくてな、目立った特徴もないし…すまん」
「そうか…。助かった、残りは俺たちで何とかする」





俺はそのあと、ジョットさんとGにちゃんと礼を言えていただろうか。白蘭とのチョイス戦からあの人たちには何度も救われた。それ以上に、俺は楽しかった。ボンゴレ遊園地でもそうだ。自由すぎる初代達と過ごす時間、俺は嫌いじゃなかった。ついこの間ファミリーに入ったばかりの日和のために尽力してくれたというのに、あの時は正直心ここにあらずだった。

日和を殺したことに、きっと大義名分なんてない。どうでもいい陳腐な理由であいつは殺されたんだ。

辛いことばかりの人生だった。吸血鬼に生まれたって、たったそれだけの理由で両親を殺され村を追われ、やっと会えた新しい家族にも別れを告げた。この日本に来る間に日和はどれだけの辛酸をなめた?日本に来てからだって楽しいことばかりじゃなかったはずだ。色々な障害を経て、やっとあいつの理解者が現れたのに、やっと人並みに幸せになれるはずだったのに…、陳腐な理由であいつは殺された。

ーー俺じゃ、あいつにその意味を与えることなんてできないのに。



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