vampire 5
あれから少し経ち、時は風薫る5月。
…………私は生まれてこの方こんなにもいい匂いを嗅いだ事がない。

「宝、おはよ。……って、あんたまたそんな得体の知れないモノ飲んでるの?」
「得体知れてるから!これ超健康にいいんだよ!」

そう力説しながら友人に『スッポンの生き血』と書かれた紙パックを見せた。言わずもがな私は吸血鬼。生き血は大好物って訳だ。まぁ勿論、人間様の血には到底敵わないけどね。
ヒトの血はとてもいい匂いがする。でもヒトの血を啜るのは吸血鬼界では暗黙の了解とされている『禁忌』。これは吸血鬼と人間が共存するための決まり事。絶対に犯してはいけない。

が、

………それにしてもいい匂いだ。
私の教室からする。不思議だなー誰なんだろう一体。いつもはこんなことないから他クラスの人なんだろうな。甘くて、凄く美味しそう。これを我慢しなければいけないなんて拷問だよ!
しかしまさかこんなにも私好みの血を持つ人がいたとはなぁ…。世界は広い!噛んじゃう可能性があるから絶対に仲良くならないようにしよう。

そう小さく意気込みながら教室の扉を開けた。

「あ、宝おはよう。」
「おはよう綱吉!」

今日もおいしそうだね!…なんてつい言ってしまいそうになる。綱吉も凄くおいしそうな匂いがするんだよねー。

片手を綱吉にひらひらと見せると席に着くため綱吉の机を回った。
理由はもちろん、綱吉はドアの隣、つまり廊下側の1番前の席だから。ちなみに私はその後だったりする。

「ん?」

そして初めて気付く、いつもと違う存在に。

「げっ」

良い匂いの正体!



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