vampire 554
10/02 土曜日 11:00

*ツナ

「外出!?ダメに決まっているだろう!あと一ヶ月は入院&絶対安静だ!」
「ですよね…」


一眠りして大分楽になった。朝になり、京子ちゃんを送り俺も風呂に入った。獄寺くんの着替えを取りに家により、病院に戻って宝のために獄寺くんの外出許可を貰おうと思ったが交渉する間もなく断られたという訳だ。


「バッサリだったのな。」
「まぁつい数時間前まで昏睡状態だった訳だしね…。」
「早く宝に会わせてやりてーよな」
「うん…。」


雲雀さんの言い分もあるし、明日すぐにアメリカに移送する訳ではない。だからといって何週間もあそこに置きっぱなしにする訳にはいかないし、スワン総督が賛成してくれなかったら絶対に無理だ。
確かに獄寺くんの体も心配だけどさ…。


「勝手にいくしかないよな?」
「もちろん。」


すっかりこういった悪事も板についてきてしまった。
宝の姿が消えたにも関わらず、雲雀さんの情報操作の甲斐あって学校ではただ交通事故にあって入院中ということになっているらしい。日本のこんなチンケな町であんな精算な事件が起きたのだ、ニュースで報道されていたってなんらおかしくないはずなのに、流石だな。


――ガラッ

「獄寺くん、ダメだった…」
「ですよね。」
「ま、関係ねーけどな!連れ出すから!」
「ありがとよ。」
「「!!?」」


獄寺くんが山本にお礼を言うなんて…やはり心ここにあらずだ。


「怪我の具合はどう?痛む?」
「いえ、あまり。」
「そっか……、着替えとか、他にも何か欲しいものある?」
「いえ…、あっ」
「ん?」
「パソコン…」
「もしかして仕事する気!?」
「…………。」
「あ…」


今、宝のこと思い出してる。二人でよく徹夜でやってたもんね。起きてからそう時間が経ってる訳ではないけど、こう突然ぼんやりしてしまうことは何度もあった。


「…デスクに、机の左側の棚の書類は全て終わってある分です。」
「うん、わかった。でもしばらく仕事のことは忘れていいよ、学生だし、体が一番だから。」
「はい。」


その後、山本を中心に楽しい話を色々した。獄寺くんも少しずついつもの獄寺くんにもどっていった。


「お前本当野球バカだな。」
「そーかぁ?」


やっぱりこの二人は親友なんだな、と、こんな時凄く思う。聞き慣れた獄寺くんの"野球バカ"にひどく安心したんだ。
早くあの元気な獄寺くんに戻って欲しいな…。


正午

「獄寺さん、気分はどうですか?」
「悪くねぇ」
「そうですか、では点滴変えますねー」


点滴は五本。何だか身動きが取りづらそうだ。あんなに体を固定されてるんじゃ満足に寝返りも出来ないんじゃないかな。


「後で先生がやって来ますが、血漿交換の方はどうします?」
「!……」
「まぁ、明日でもいつでも」
「やらない」
「え……?」
「血漿交換は、もうしない。」
「でも…」
「やらない、したくない」
「……分かりました」


ゆっくりと看護士さんは去っていく。


「獄寺くんいいの…?その、血を入れ換えないと吸血鬼になってしまうんでしょう…??」
「…ならないですよ。半分入れ換えましたし…もうアイツに浸食されることだってないです」
「!!、でも、」
「吸血鬼になったって別に構わないです。俺…写真とかほとんど撮ってなかったんです。アイツが残していったものはもう、何一つなくしたくない」


そうして獄寺くんは、日和の血を体に残しておきたいんです、と小さな声でつぶやいた。

宝ならきっとそんなことは望まないだろう。宝は過去より未来を取る。例え自分の事を忘れてしまっても獄寺くんが幸せになれるなら迷うことなく忘れてくれと言うだろう。
こんなことわざわざ俺なんかが言わなくても、きっと獄寺くん自身が誰よりもわかってる。それでも宝のいた"証"が欲しいんだ。


「なぁ、獄寺…明日宝に会うだろ?会ったらお前、どーするんだ?」
「…どーするって……?」
「宝と一緒に死ぬとか…絶対やめてくれよな」
「…死なねーよ。そんなこと日和の前で出来るか」


隣の部屋からはパーンというクラッカーの弾ける音と誕生日を祝うバースデーソングが聞こえた。


「そうだ、ナミモリーヌでケーキ買ってきたんだ。京子ちゃんおすすめのミルフィーユ、食べない?」
「おっ、いいなー」
「山本の分もあるよ!」



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