vampire 141
【海賊の血】

ウィルとエリザベスはボートで洞窟から脱出するとインターセプター号にあげられた。


「お嬢さん!お久しぶりです!」


ギブズが最初に声をかけた。エリザベスは男の顔をじっと見つめ、やがてその顔に笑みが広がる。


「ギブズさんね!まだ海軍にいらしたの?」
「いや、とっくに辞めました。」
「でも、これは………イギリス海軍の船でしょ?」


その時ようやくエリザベスは甲板を行き来する乗組員に気がついた。海軍の兵士ではないと一目でわかる。海賊にしか見えない、胡散臭い連中ばかりだ。
よく見るとギブズも薄汚れていて昔とは全く違う。


「ジャック達はどうした?」
「ジャック達?…ジャックってジャック・スパロウの事!?」


エリザベスはさっとウィルの顔を見た。やっと海賊から逃げてきたと言うのにどういう事だろう?


「ジャックは…間に合わなかった。だけど、もうすぐ来るはずだ。」


ウィルはエリザベスを促して船室に向かう。
その瞬間、


「ま、待て日和!!足早過ぎだ!!」
「だって遅刻すると置いてかれちゃうって話じゃん。」


そんな二人の大声が聞こえた。
宝は獄寺の掌を引っ張って走る。獄寺も決して足が遅い訳ではなく寧ろ早いくらいだが宝にしてみれば遅い。


「は、隼人君に宝!?」
「!!、お姉様!」

ぐきっ!

「ば、危なっかしいな!」
「うォ…!、ごめん。」


エリザベスに気付きバランスを崩す宝だが見事にキャッチ!
体制を立て直すといそいそと船に飛び乗った。


「宝…」
「お姉様!」


そしてエリザベスを抱きしめる。


「宝…ごめんなさい、私またあなた」
「また!護れなかった……。」
「!!」


エリザベスは目を見開いた。
ずっと自分を守ってくれた宝にとどめをさしたのは自分だというのにこの子は何処まで自分を責めればいいのか、と。


「私が弱いから!またお姉様に怖い思いをさせてしまった…。掌に傷まで負わせて…。ボディガードなんて、名ばかりもいいとこだ!」
「それは違うわ!宝は、守ってくれたよ…。私をかばって、銃弾も切り傷も全部盾になって…。姉として、私は宝を守りたかったのに私は馬鹿だから、あんな事しか思い浮かばなくて…、宝の事だから、逆に自分を責めてしまう事なんて少し考えればすぐに分かってしまうのにね。」

「ありがとう。」
「っ!!お姉様…!」


1番待っていた言葉。もう離すまい、と宝はエリザベスに抱き着きっぱなしだ。
流石のエリザベスも照れる。



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