勇気を出した瞬間、
「チョコバナナの割り箸なくなっちゃったわ!」
「あとチョコももうないぜィ」
「え!?チョコはかなりの量こっちに移して...神楽ちゃん」
「何アルかその目は!冤罪アル!!変態アル!!とんだ濡れ衣ネ!!」
「その口の周りの残骸何とかしてから言えェェェェ!!!」
「名前ちゃん!教室まで割り箸取ってきてくれるかしら!新ちゃんも!突っ込み散らかしてないで調理室までチョコ取りに行ってきてちょうだい!」
スパーン!とお妙ちゃんの平手が新八くんの頭に決まり新八くんは頭にたんこぶをこさえて涙目になりながら走っていった。私も周りの人達に一言二言告げてからブースを抜ける。
今日は銀魂高校の学園祭だ。
3年生にとっては一大イベントの今日はとても晴れた良い天気でグラウンドを見ればどこかのクラスが組んだバンドが歌を歌っていた。ああ、夏だなぁと思いながら廊下を走っていく。3年生の教室は食べ物屋さんのブースにも使われることが無く静かで落ち着いた空気が流れていた、一息ついてから教室のドアを開けて、思わず息を呑む。
「...せ、」
先生。
口から零れたのが、空気だけで良かった。
クラスの様子をなかなか見にこないと思っていたけど、まさか教室で寝ていたなんて。
しかも、そこ私の机。
他意はない。他意はないって分かってる、分かってるんだけど、ね。嬉しいとか思っちゃうし深読みだってしちゃう。
先生はきっと近くにあった手頃な机を選んだだけだと思うんだけど、だけど。
「(嬉しい、な)」
だめだ、にやけてしまう。
足音をたてないように近付いて自分の席の前に立つ。ふわふわの銀髪が目の前にあって、つい、いたずら心、いや下心が疼いた。静かに手を伸ばして自由に跳ねる毛先を指で触れる。
「......」
やわらかい。
指先から、そっと手のひらで全体を撫でる。
手のひらにふわふわの髪があたって擽ったいけどそれ以上に嬉しくて、胸が高鳴った。
ずっとこの時間が続けばいいなぁなんて甘い事を考えていたけれどポケットに入れている携帯が小さく震えたのに気づいて現実にもどる。
「...戻らなきゃ」
手を離して割り箸を持って教室を出ようとした瞬間、
「後でちゃんと行くからな」
返事も出来ずに走り去った。
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