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「#エロ」のBL小説を読む
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一生一台の告白だったと思う。

好きです、なんて言うつもりなんてこれっぽっちもなかったのに。気づいた時には口をついてぽろっと出てしまっていた、おかしいな、私の口はこんなに軽くなかったのに。
案の定目の前にいる高杉先生はいつものクールな態度とは裏腹にポカンとして私を見ている。
ああ、これで私と先生の唯一の繋がりも切れてしまうんだろうか。……ただのお腹の弱い生徒と保健の先生ってだけだけど。

極度の緊張しいであがり症の私は何かあるとすぐに腹痛になって体調に負担をもたらす。保健室に湯たんぽを借りたりする事は日常茶飯事で小学校中学校とどちらの保健の先生ともとても仲が良かった。
そして高校に上がってから一番驚いたのはそんな私にとっては関わりを避けられない保健の先生がひどくカッコイイ男の先生だったという事。そのルックスや教師とは思えないぐらい俺様な態度に一部の女子からは本気でアタックされたりしているらしく、そんな先生とやっていけるだろうかとひどく不安だった。でも、

『何だ、また腹痛ェのか?』

保健室に行くたびに柔らかくなっていく態度や垣間見える表情がとても素敵だなと思ってしまった。気付いたら、目で追ってしまっていて私も先生に夢中なその他大勢になっていた。

「名字はもっと腹を頑丈にすべきだな、お前そんなんじゃセンター試験とかどうすんだ、トイレに時間割いてる暇なんざねぇんだぞ?」
「分かってます、けど……」
「まぁでも、こうして特定の生徒と話しこむなんざ初めての経験だぜ」
「え?」
「ここまでしょっちゅう来る生徒、お前ぐらいなもんだな」

そう言う高杉先生の表情があまりにも優しくて、心臓がぎゅってなった。
ふわりと頭を撫でられて綺麗な白衣から洗剤のいい匂いがする。柔軟剤なに使ってるんだろ、先生らしい上品な花の匂い。薬が聞いてきたのと撫でられている心地よさでとろりと襲ってくる眠気に思考が蝕まれていく、そして気づいた時にはぽろっと言ってしまったんだ。

「せんせー……」
「あ?」
「……すき」
「…………は?」

撫でていた手が止まった。
自分が何を言ったのか、理解するまでにかなりの時間が掛かった。そろりと目を開けた先にいたのはポカンとした高杉先生の顔で。
羞恥よりも何よりも、血の気が引いた。

「え、あ、あの、……」

言ってしまった言葉は戻せない。
先生として、とか言えたらいいのに下心が詰まりすぎていてそんな事は言えなくて。
慌てる私の顔の横に先生の手が置かれる。
ぎしっとベッドが軋む音がして、先生の顔が、腕が、すぐ間近に迫っていた。

「っ……」

ベッドについていない方の手でまた頭を撫でられてするすると指先が頬をくすぐる、その軌跡は何だか意味ありげで有り体に言ってしまえばいやらしい動きをしていた。
指先の温度が熱くて、自分の鼓動がうるさくて、指1本も動かせない。なんで、こんな、どうすれば。

「名字」
「は、はい……!」
「あんま大人をからかうんじゃねぇ」
「からかってなんか……!」
「ガキに、特にお前みたいな奴に火遊びは早ェよ」
「火遊びって、」

ふと、顔が近付いてくる。
どうしよう、どうしようどうしようどうしよう。背けることも払い除けることも出来ずにぎゅっと目を瞑るが期待していた感触はいつまでも来なくて、かわりに鼻をむぎゅっと摘まれた。

「んっ」
「キス1つで震える女は相手出来ねぇよ」

そう言って笑っている先生は今まで見た事ないような″大人の男″の顔をしていた。
そしてあっさり私の上から退けるとふ、といつもの顔で微笑む。

「お前が卒業して、まだ俺が好きだったら……」
「っ……」

言葉半ばで掠めるように頬にキスをされた。
そして唇にはせずに寸前でぴたっと止まる。

「今度はちゃんと口にしてやるよ」

遊ばれてる。
完全にからかわれてる。
燃え上がるには温度が低すぎた私の恋は、先生によって火を着けられた。
寸止めなんて悔しいから、今度は私が先生に火を着けます。誰より近いその場所に行くから大人になるまで待っていて。

title by確かに恋だった それは甘い20題