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ドクドクドクドク。
高まる心臓の音が耳に響いている、体の中の大事なポンプは私の意思とは関係なくメーター振りきって壊れてしまいそうだ。この感じは、好きじゃない。

心臓がドクドクしているのは生きてるから。
心臓がドクドクするのは恋をしているから。
だとしたら、これは治らないんだろうか。
恋の病って、こういう時に使うのだろうか。
生きることと恋をすることが2つで1つなんだとしたら、私はきっとこの苦しみから逃れる事はないのだろう。
生きるのも恋をするのも大変で、目の前の公式や漢字なんて比じゃないぐらい私の問題は深刻だ。

「名前ちゃん、先生の話聞いてましたかー?」
「聞いてませんでした」
「そんな真っ直ぐな瞳で言う子初めて見たわ」
「最初からお願いします」
「どこが最初だったとか俺も忘れたし」

ただの面談、ただの進路の話。
それだけなのに先生と2人きりってだけで何かもう心が落ち着かない。こんな事を私が考えて苦しんでいるなんて先生は思いもしていないだろうな。
夕日が差し込んできて先生の髪をオレンジ色に染めているのが綺麗で思わず見とれていたら持っていたボードで頭を軽く叩かれてしまった。

「いたい」
「お前ボーッとしすぎだから、さっきから何考えてんの」

何考えてんのも何も、一つしか考えてませんよ。

「暴力反対です」
「いやこれ暴力じゃねぇし、なーに先生に見とれた?」
「………………。」
「ごめん調子のってごめんだから真顔はやめて無言はやめて、そういうの一番精神的にくるから」

そうですよ、って見とれてましたよって素直に言えたら良いんだろうけど。
先生の事が好きで、すごく好きで、それはもうどうしようもなくて。だけどそれを捨てることなんて出来なくて、でも一線を越えてしまう勇気なんてあるはずもなくて。可哀想な私の恋心。だけど、

「とりあえず、今の頭で大丈夫そうな大学目指そうかなって……」
「お前もーちょい頑張れば良いとこいけんじゃね」
「うーん……」
「俺が最後まで面倒みてやっから頑張ってみ」
「…………はぁい」

先生の笑顔に苦しくなったり、一言に嬉しくなったり、早くなるこの鼓動の音が心地よく感じられるようになりたいって思う。
それがいつになるのかどれぐらいかかるのか分からないけど可哀想な恋心のままで終わらせたくはないから。生きるのも恋をするのも大変だ、でも国語や数学よりも大切で難しいこの感情を教えてくれた先生が私は今日も大好きだ。

title by確かに恋だった それは甘い20題