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眠っていたはずの彼女がいなかった。
隣にあったはずの温もりはとっくに冷えていて、布団は大幅にめくれていて襖は少しだけ開いている。はらはらと落ちていく白い雪が目に焼き付いた。ふらりとどこかへ消えてしまうのはわりといつもの事で探しに行くことはないのだが、今日は何故か探しに行く気になって外へと出る。

「名前?」

屯所の近くにはいないのか、明日あとは外へと伸びていた。一体こんな時間にどこに行ったんだ、雪めちゃめちゃ降ってんぞ今日。なんて心の中で悪態をつけながら持っていた傘を開いて外へ歩き出す。あいつが行くところとすれば万屋の所か、行きつけの喫茶店か、いやこの時間に喫茶店はないか。足跡は新しい雪がとっくに画している、辿ることはもう出来ない。どうすればいいのやら。

「...ったく」

もう少しわかりやすく居なくなれっつーの。
自分の直感とあいつの性格を思い出しながら白い道を歩き出す。手がかじかんできて冷たい風が徐々に体温を奪い、鼻先がじんと痛くなってきた。あいつが計画して外へ出ることはまず有り得ないので上着も着てねぇだろうな。ふと、心が折れかけた時に見えた背中に思わず足を早めて後ろから小さな体を抱え込む。傘は放り投げた。案の定体は冷えきっていて、死んでるんじゃないかと錯覚するほどだ。俺の両腕で拘束されている彼女は少し身動ぎをして収まりのいい場所を探し、やがて落ち着いたのかぐりぐりと後頭部を押し付けてくる。

「...副長」
「お前はこんな時間に何してやがんだ...」
「んー...」

気の抜けた声を出しながら名前は体を回転させて向かい合う形になって笑った。

「見つけてくれるかなぁって、思ったんです」
「はぁ?」
「土方さんなら、私が急に家出しても、それが夜中でも、探しにきてくれるかなぁって」
「んだそれ、それを期待してたのか?」

冗談めかして言った言葉にも関わらず、名前は嬉しそうに言う。

「期待、してました」
「......」
「実際探しにきてくれましたし」
「...当たりめぇだろ」

お前の痕跡を探すことはもう慣れた。
どこに至って、探してこうして繋ぎ止めることも、もう出来る。いなくならないのが一番だけどな、と思いながら冷たい額に唇を寄せた。

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土方さんに迎えに来てほしい。