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くらくらする。
目を覚まして一番最初に思ったのはそれだった、朝から具合が良くなくてぼんやりしてたら目敏く山崎さんに指摘されてあれよあれよという間に布団行き。最初は大丈夫です、とか大袈裟です、とか言ってたけど今になって山崎さんの判断が正しかったんだと痛感した。これ、熱上がってる。
ゆるりと視線だけ動かせば誰かが部屋の隅にいる事に気付いた。あの、派手な髪って...もしかしなくても終さん?

「Z〜Z〜」
「(寝てるんかい!!)」

気持ちよさそうに眠っている終さんの傍らには水の入った桶が置かれていた。
ああ、看病してくれていたのか。
隊長だから忙しいだろうに、彼は存外面倒見が良いところがある。すっかり温くなっている額のタオルがずるりと落ちた瞬間に終さんがピクリと動いた。

「っ...」

何も悪いことしてないのに条件反射で目を閉じてしまい、狸寝入りする形になる。服が床と擦れる音が聞こえる、起きたのかな。
ふと、顔に影が落ちてきて顔を覗き込まれている事を理解した。嫌でも理解した。落ちつけ、ここまで来たら狸寝入りを貫くしかない、落ち着いて素数を数えよう。
するりと落ちたタオルが回収されて、水で洗ってる音が聞こえてきた。やっぱりこの人は優しい。またひんやりとした感触が来ると思いきや額に感じたのはじんわりと冷たい手の感触。

「!」

目を開けなかった私を褒めて欲しい。
これ、終さんの手ですよね。
触れている部分からどんどん熱を持っていく、まるで私の熱を奪っていくように。する、と頬を(恐らく)手の甲で撫でられてまた心臓が一つ大きくなる。寝ていたらどんなに楽だったか。

「......」
「......」

やっぱりもう無理。
頬から額にかけて行ったり来たりする手に耐えられなくて目を開けようとした。けど、ぐっと濃くなった終さんの匂いに開きかけた瞼が強制的に閉じる。

ふ、と額にかかった吐息。
声は、出ていない。
でも何を言っているか、理解してしまった。
吐息混じりというか、ほぼ吐息だったけど。

はやくよくなって

なんて、反則すぎやしませんか。
次いで感じたマスクの感触に、ぶわりと熱が増した気がした。

title by確かに恋だった それは甘い20題