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- ナノ -
※沖田、土方と書いておきながらほぼ山崎です。

「名前ちゃんはさ、彼氏欲しいとか思わないの?」
「彼氏!?彼氏って...あの彼氏ですか!?」
「ごめんどの彼氏??」
「鼻に穴が空いていたりズボンを腰まで下ろしたり...」
「それとっつぁんの娘の元カレだよね!?あんなん世間一般の彼氏じゃないから!」

何だ違うのか、と呟きながら私は洗濯物を畳む手を再開させる。何故いきなりそんな事を言い出したのか分からずにもう一度山崎さんを見るが目が合ってもニコッと笑われるだけ。

「いきなり何ですか?」
「男所帯で仕事してたら何かないのかなーと思って」
「ないです、ねぇ...意識したこともないといいますか」
「じゃあ副長とかは?」
「……え!?」
「だって真選組一のモテ男だし同性から見てもカッコイイよね、怖いけど」
「う、うーん...確かにカッコイイですよね、街に出る度騒がれてますし……怖いけど」

始めてきた時のあの目は一生忘れられない。
職場の面接に来ただけなのに取調室に連れてかれるし根掘り葉掘り聞かれるし墓まで持って行くつもりだ、この恐怖と恨み。
でも慣れてくる度に少しずつ優しくなったり違う面を窺ったりして印象は大分変わった気がする。笑うと結構可愛いですよね。

「この間雨に濡れてたら傘持って迎えに来てくれたんです、屯所に戻ってからも部屋で温めさせてくれました」
「え!?副長の部屋で!?」
「だって暖房器具があるのって副長とか局長部屋だけですし」
「ああ、まぁ確かに。じゃあ、沖田隊長は?」
「沖田さんはー...たまに意地悪されますけどお菓子とか持ってきてくれるんですよ!それも期間限定のとかすごく高いやつとか!」

その期間限定スイーツや高いお菓子を買うために並ばされている神山という名の隊士の存在を名前は知らない。だが神山も神山でそういうプレイだと思い込んでいるため利害が一致していて誰も何も言わない暗黙の了解だ。

「その2人とは付き合ってみたいとか思わないの?」
「恐れ多すぎて刺されそうです」

口に出さないだけであの2人が巡回に行くと女の人達が色めき立っているのは知っている。
バレンタインもほとんど処分しちゃうけどあの二人あてに届くチョコレートはかなり多いのだ。真選組筆頭のイケメンと言っても過言ではないあの2人にそんな感情もったら色んな人に恨まれる所の話じゃない、絶対に闇討ちされる。

「てめーらいつまでサボってんだ」
「山崎ィ、お前地味のくせに女中一人占めしてんじゃねぇよ」
「地味のくせにってなんですか!それに俺は今日れっきとした非番です!!」
「……で、何の話してたんだ?」
「……...」
「……...」

私と山崎さんはお互いに目を合わせてくすりと笑う。

「「内緒です」」

怪訝そうな顔をする2人がまたおかしくて洗濯物を畳みながら頬を緩めた。でも、確かに、こんな2人と付き合ったら毎日が楽しい気がする。
そんな予定は、ないんだけど。
なんて事を考えていたら土方さんがトン、と私の隣に腰を下ろした。山崎さんは、……気付いたら地面に転がっていた。

「あれ、土方さん?」
「……あとで部屋に茶持ってきてくれ」
「はい!」
「名字ー、あとで菓子食おうぜィ」
「良いんですか?」
「おう」
「じゃあ後で縁側にお茶持っていきますね」
「ん、じゃあ……死ね土方」
「……お前がな総悟」

ギラリ、とほんの一瞬2人の目が鋭く光った事を私は知らなかった。

title by確かに恋だった それは甘い20題