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基本的に特別なことでもない限り夜は早くに眠る方だ。
風呂も入り水分もとりもうやることも無いだろうと部屋に戻る途中に通りがかる共有のスペース、そこにあいつはいた。うつらうつらと船を漕いでるということは寝落ちしているのか。
足音を立てないように近づいて顔を覗き込めば案の定そいつは眠っていて。

「…お前は警戒心っつーもんをどこに置いてきたんだ」

眠っているやつに説教を垂れたとしてもなんの意味もないと分かっちゃいるが言わずにはいられない。通りがかったのが俺だから良かったものの先に銀時やヅラが見つけていたかと思うと、いや、想像もしたくないが。

「おい、起きろ。風邪ひきてぇのか」
「う、ん……」

小さなうめき声をあげてゆっくりと目を開けた彼女の目からは瞬きした拍子にぽろりと涙がこぼれ落ちた。今も昔もこいつの泣き顔を見ると落ち着かなくなるのは何でなのか、心臓が嫌な音を立てる。
ぱちぱちと瞬きをする度に滑り落ちる涙は、重力に従って下へ落ち彼女の服へと吸い込まれていった。

「らび」
「…高杉くん」
「怖ぇ夢でも見たのか」
「………わかんない、忘れた」
「そうかよ」

寝起きのせいか少しぼんやりとしているらびの代わりにまだ零れ落ちる涙を指でぐいっと拭ってやる。夢のせいでこいつが泣く事がたまにあるということに気付いたのはいつだったか。
決まって夢の内容は覚えていないが、その夢を見た時こいつはいつもより少し元気がなくなる。今日も少し顔色が悪い。

「…私が変な夢を見る時って、高杉くん絶対そばにいるよね」
「は?」
「目を開けたら高杉くんがいるとすごく安心する」

そんな安心しきった顔で、そんな声で、そんな事を軽々しく言うな。
自分を特別に思っているかのように聞こえるその言葉は確かな響きを持って自分の中に残る、こんな何でもない誰にでも言えるのであろう言葉でさえお前に言われるとここまでかき乱される。お前は知らないだろうが。

「…何なら朝起きてもそばにいてやっても良いんだぜ」
「ん?」
「どうせ寝ろっつっても眠れねぇんだろ」
「…たぶん?」

隣に腰を下ろして彼女の方へと寄りかかりその肩に頭を預ける。

「寝るにしては勿体ねぇぐらい明るい月が出てる夜だ、お前が眠くなるまで付き合ってやるよ」
「高杉くん…ありがとう」
「別に、礼を言われることじゃねぇよ」

お前が弱いところを見せる相手が俺だけなんだとしたらそれだけで釣りが来るほどのものはもらっている。ぽすっと頭に緩くかかる重さにらびも俺に寄りかかったことを悟り、ふわりと香る石鹸の匂いにほんの少しだけ眠気が誘い出された。
ここにいると、確かめるように指を絡めて握りしめる。
応えるように握り返された手に自然と口角は上がっていた。

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