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「坂田くんお待たせ」
「おお」

クラスが違うこいつを迎えに行って一緒に帰るのは言ってしまえばシフト制だ。
高杉はバイトで来れない日があり、ヅラは委員会の仕事がたまに入る、そういう日はだいたい俺が迎えに来る事になっている。正直この役割は俺だけでよかったのにそれは不公平だ何だと文句をつけてきたので仕方なくシフト制という形に落ち着いた。時給は発生しないけど、むしろ時給よりいいもん発生してるから全然いいんだけど。

「今日は高杉くんバイトだったっけ」
「あーそうね、ついでにヅラは委員会ね」
「そっか、なんか坂田くんと帰るの久しぶりな気がする」
「先週は1回も一緒に帰ってねぇからな」
「ね」

ふふ、と笑うと彼女を見ると胸の奥から湧き上がる気持ちがある。
恋なんて言葉じゃ片付かないぐらい鮮烈で、歪で、それでいてどこまでも真っ直ぐで曲げようのない感情。前世の自分のものなのか、それとも今の自分が生み出したものなのか。
俺には分からないけれど。
思い出す記憶の中の彼女は今と同じ顔で笑っていて、その笑顔と同じぐらい泣いていた。
初めてこの世であった時から泣き虫だとは思っていたが、昔からかよなんて少し笑ったこともある。今は、今この世界では、泣かないで欲しい。笑っていて欲しい。

「なぁらび」
「なに?」
「寄り道、しねぇ?」
「どこに?」
「どこでも」

お前が何を思って俺たちを見送っていたのか、何を思って手当をしていたのか、誰を想って過ごしていたのか、分からないことが多かったけど。お洒落の1つも出来ないような人生だったけど。

「欲しいもんとか、見たいもんとか見に行こうぜ」

その分今この瞬間を目いっぱい楽しませてやりたい。できれば俺の隣で楽しんで欲しい。
言った流れでらびの手を取ろうとした瞬間、がしりと尋常じゃない力で両肩を掴まれた。振り向かなくたって分かる。

「じゃあイ〇ンでも行こうぜ、ちょうど新しいそろばんが欲しかったところだ」
「俺は参考書を見たくてな、お供させてもらおう」
「いやお前らなんでいんの!?」
「バイト、代わって欲しいっつわれたから休みになったんだよ」
「委員会が予想外に早く終わってな、急いでこっちに向かった」
「じゃあ直帰しろや寄り道してんじゃねぇよ」
「今まさに寄り道の誘いをしてたやつに言われたくねぇ」
「そもそも寄り道する時は先生に先に言わないと晩御飯残したりしたらまたゲンコツされるぞ。床に陥没したいなら止めないが」
「あ、そっか…私先生に連絡してこようか?」
「いやもう寄り道いいわ…こいつらと一緒に行ったんじゃ意味ねぇから…」

どこまでも邪魔しやがってまじで腹立つわ。
今日の晩飯にたらふく七味でも盛ってやろうか。
いやでも飯になんかすると松陽尋常じゃねぇぐらいキレるからやめとこ。
まだ死なたくない。
寄り道はまた今度、2人の時にじっくりすればいい。
とりあえず今日はこれで勘弁しようとらびの手を掴んだところで読んでいたかのように高杉に手刀されて外された。こいつマジでいつかぶっ飛ばす。

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