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「で、おまんらの誰が名前ちゃんと付き合うとるがか?」

始まりはこの一言だった。

昼に言ってたように遊郭に言った4人は酒を交わしながら名前の事を話題にしていた。
遊女をつける事なく飲み続ける銀時達は坂本の口から名前の話題が出た瞬間に酒を飲む手が止まる。

「……なんて?」
「同門の出っちゅーのは知っとるがおんしらとは並々ならぬアレを感じるぜよ」
「……アレとはなんだ」
「アレはアレじゃ」
「だからアレって何だ」
「ムラムr「言わせねーよ!?」ムラムラしとるんじゃろ?」
「おい何で2回言った?わざわざ俺が止めたのに何で2回言った?」
「つーかムラムラを感じるってそれてめぇがムラムラしてるだけだろうが」
「高杉がムラムラとか言うのめずらしいのう、あははは!あははは!!」
「……なぁ、こいつここで殺しても本望だよな」
「おちつかんか高杉!」

刀を持ち出して今にも坂本に斬りかかりそうな高杉を必死に押さえる桂、そんなトップ4を見ながら他の皆は遊女に酌をしてもらう。
ちなみに名前は隠れ家で一番信用されている黒子野と留守番中で話題の渦中とは露知らず2人でお茶とお茶菓子を仲良く食べていた。

「あだ名で呼ぶっちゅー事は気に入っとる証拠じゃ、おんしら特別扱いされてる事に気付いとらんがか?」
「特別ぅ?」
「ためしにワシがらびって呼んでも名前ちゃん振り返らなかったぜよ、おんしらが呼ぶから意味があるんじゃろ?」
「それてめぇが嫌われてるだけだろ」
「あはははは!高杉は冗談がうまいのう!!…………泣いていい?」
「いや、普通に聞こえなかっただけだろう」
「つーかあれだから、らびって言い始めたの俺だから。ヅラと高杉は真似してるだけたからな」
「そうだったんか、羨ましかったがか?」
「俺とらびが一番仲良かったら嫉妬したんだろ〜?」

ニタニタと厭らしい笑顔でそう言う銀時に桂と高杉の額に怒りマークが浮かぶ、めずらしく分かりやすく怒る桂に坂本は「めずらしいもん見たぜよ!」とまた笑った。

「よく言うぜ、あいつが来たばかりの頃に泣かせて先生に拳骨食らってた数はてめぇが一番多かっただろ」
「そうだ、そして泣いているらびにおにぎりを渡して慰めたのは俺だ」
「お前の話は聞いてねぇ」
「いや聞いてよ」
「ああ?らびと身長近いの気にして一時期避けすぎて泣かせた短男に言われたくねぇよ小せぇのは今もだけどな」
「黙れ」
「いやお前が黙れ」
「今考えてみれば、らびは恋愛というものをした事があるのか?」

ふと桂が口にした疑問に高杉と銀時の喧嘩が止まる。松下村塾では勉強と剣術を学び、戦争に参加してからはもっぱら家事と治療。
女の子らしい事をしてきていない彼女は恋愛をする暇などなかった、ましてや恋愛感情がどんなものか知っているのかも危うい。

「酷な事をさせているのう、今時期の若い者はオシャレが楽しい時期じゃ」
「いや俺らも今時期の若い者」
「過ぎ去る青春時代を楽しませてやる事が出来ずにいるのだな…」
「いや俺らも青春時代真っ盛り」
「おい、酒がなくなった」
「てめぇだけ全然関係ねぇだろうが空気読めバカ杉」
「あ"?」
「未亡人にムラムラしてたヅラとヤクルトにムラムラしてた高杉がいたんじゃろくな男も寄り付かねぇからな」
「おい、誰がいつどこでヤクルトにムラムラしたって?」
「あれはムラムラではない、キュンキュンだ」
「未亡人にキュンキュンしてる時点でアウトだろ」

そもそも名前自体恋愛をファンタジーだと思っているため、その感情が自分に向けられている事に気付いていない。前に隊士の一人が「君が好きだ」と苦し紛れに告白したが彼女はいつもと変わらない笑顔で「私は白身も好きだよ」と返事していたのを銀時達は知っていた。全力でツッコミたいのを我慢して見ていた。
そして灰のようにサラサラになって燃え尽きる隊士の姿を見て同情と共にこうなりたくない、と強く思ったのだ。

「ま、俺がもらうけどな」
「安心しろ、それはぜってぇないから」
「幼馴染みとて容赦はせん」
「おんしらも頑固じゃのう、名前ちゃんの気持ちは無視か?」
「好きな奴がいんなら全力で邪魔してやるよ」
「万が一にもてめぇらの手に渡さねぇが、奪われねぇ努力でもするんだな」
「意中の相手がいないのならば、その相手になりたいと思うのが素直な気持ちだろう」
「あははは!どう転んでも面白そうな展開が待ってそうじゃな!!」

夜はまだ、始まったばかり。
その頃……

「名前さんは、お好きな人はいないんですか?」
「好きな人、ですか?」
「はい」
「……います」
「え!誰ですか?」
「秘密にしてくれますか?」
「は、はい!」
「えっとですね…先生です」

3人は知らなかった、本当の強敵は己の恩師であるということを。

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