テニプリshort | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
もう11月中旬、寒さも厳しいものになってきてそろそろ厚いコートを出す時期になってきた。
吐く息は白くマフラーからはみ出る鼻先は皆トナカイみたく赤くなっている。

「冬だね」
「ああ、だんだん寒くなってくるな」

隣にいる柳君は空を見上げて返事をしてくれた。今日はお互いに部活がなかったので久しぶりに一緒に帰ろうということになって、こうして並んでいる。同じクラスになって隣の席になってからずっとずっと片想いしていて、たまに話せるそんな小さな事が幸せだった私だけど「付き合ってほしい」と言われた時は幸せすぎて倒れるかと思った。
隣を歩く柳君はやっぱり大きくて、でも細い。
真田君に比べたら繊細な印象を受ける。
こっそり盗み見をしていたらこちらを向いた柳君と目が合ってしまった。

「あ」
「そんなに見られると気恥ずかしいのだが」
「ご、ごめん」
「いや、お前から感じる視線には慣れている」
「……そんなに見てましたか私」
「ああ」

あっさり返された言葉に恥ずかしいと思って目をそむける。だが上から降ってくる視線に何だかものすごく恥ずかしくなってまた顔を上げれば柔らかく微笑んだ柳君と再び目が合った。

「……?」
「見られるとはこういう事だ」
「頑張って数減らします」

そう言うと同時に目の前の横断歩道が赤へと変わる。ああちょっとついてるかも、なんて。
立ち止まる分、一緒にいられる。マフラーの下でこっそり微笑めば柳君が「名字」と声をかけてきた。

「なに?」
「寒くないか?」
「……寒い」
「手は冷たくないか?」
「冷たい、かな」
「そうか、ならば……」

柳君の大きな手が私の左手を緩く掴む。
お互いに冷えた手が重なりあって微かな温もりが生まれた。私はビックリしてどんどん熱が上がるのを感じてまた恥ずかしくなる。

「……こうすれば温かいな」
「っ……」
「このまま遠回りをして帰ろう」
「柳君」
「なんだ」
「私…幸せすぎて死んじゃう」
「ふ、……俺もだ」

繋いでいない柳君の手が伸びてきてその長い指で私の頬を撫でた。
こんなに幸せなら寒さだって嬉しくなるよ。