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「……今日も今日とて不法侵入ですね」
「うるせぇよ」

お風呂からあがって髪を拭きながら布団へ向かうと、窓辺に腰掛けながら月を見ている高杉さんがいた。
月の光に照らされている高杉さんはとても綺麗で、髪を拭く手が思わず止まる。

「…眠りに来たんですか?」
「別に…」

おかしいな、そっけないのはいつもの事だけどここまで目が合わないのは初めての事。
近付こうとするけど何というか、威圧感があって足が動いてくれない。それでも何とか平静を装いながら窓辺の近くに腰を下ろすと夜風が濡れた髪を通り抜けて少し寒い。
何か膝にかけようとしたら、高杉さんの手が伸びてきて腕を掴まれた。

「?」
「……」

そのまま静かに重なる唇。
この人の、考えている事が分からない。
この行為に意味はあるのか、ただの戯れなのか私には分からないけど、だけど嫌じゃない自分の気持ちは痛いほど分かってる。そうじゃなきゃとっくに突き飛ばしているはずだ。
触れてくる手を振り払うことも、近付く体に手を回す事もしない。何でもない風に装うのが私の精一杯だ。

「ん……っ」

それでも、深くなるそれに息が苦しくなってしがみつきたくなる手を必死に抑える。

「たかすぎ、さん……」
「あ?」
「……これ以上続けるなら、私の手を縛ってください」
「は?」
「これ以上続けるなら、私の手を縛っ「繰り返してんじゃねぇよバカ」

高杉さんは掴んでいた腕から手を離すと訝しげに私を見つめる。
その瞳には明らかに今の発言に対する嫌悪が現れていた。あれ私もしかしてとんでもない性癖持ってると思われてる?

「お前、そんな趣味あったのか」
「違います」
「じゃあいきなり何のつもりだ」
「私が、あなたにすがりつかないために」
「…………」
「あなたを、これ以上想わないために」

私に触れさせないでください。
真っ直ぐにそう言うと高杉さんは妖しく笑って「何だそりゃ」と私の頬に触れる。

「……あなたが言った事を私なりに守ろうとしているんです」
「じゃあ、守ってみろよ」

自力で、と彼は言った。

「え……?」

その瞬間に高杉さんはまた唇を寄せてきた、ただし今度は目蓋に。次に頬、首筋、そして胸元。

「な、……!」
「それがお前の出した答えなら、守ってみせろ」

そんな無茶苦茶な、と思ったが反抗の声をあげている暇ではなかった。
また首筋に唇が押し付けられてしかも軽く吸われる、あ、ちょ、痕とか残したら怒りますよ。
よく分からない感覚に翻弄される私をよそに高杉さんは今度は耳を甘噛みした。

「ひ、ぁ……!?」

思わず着物を掴みそうになる手を握り締めて目を強く瞑る。
私を突き放したいのか構ってほしいのか食べたいのかどれなんですか、最後はないと信じてますけど。
本当に分からない、分からない。……分からない、けど

「……なまえ」

好きになるなとか、自力で触らないようにしろとか、言うわりにこんな時だけ名前呼ばないでください。私から触れなくたってこれじゃあ意味ないじゃないですか、バカ。

「高杉、さん……」
「…………何だ」
「私、もう、死んでも、いいですか?」
「……まだ、生きてろ」

その"まだ"という言葉を深追いしたくなる私は、きっとまだまだ大人にはなりきれないだろう。

_____
蛇足
死んでもいいわ→愛しています
という二葉亭四迷の言葉遊びをさらに遊ばせてます。
「私もう死んでもいいですか?」→「私はもうあなたを愛していいですか?」
「まだ生きてろ」→「まだ好きになるな」
と、こんな感じで2人で言葉遊びをしています。

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