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「おい、……おーいってば」
「…………」
「茶屋のお嬢さーん」
「…………」
「お嬢さーん、あれ、生きてる?」
「あ、すいません、…えーと、かまぼこでよろしかったですか」
「かまぼこ!?おしるこだよ!四文字ってとこしか合ってねーよ!!」

どうしたんだよ、と肩を揺する銀さんをぼんやり眺めながら傍に置いておいた皿を差し出す。
その上に乗っているのは赤と白のかまぼこ。

「どうぞ」
「いやどうぞじゃねし!!つかほんとにあんのかよかまぼこ!!お前まじでどうした!!?」
「じゃあこれでどうぞ」

その上にどちゃっとあんこをのっけて微笑むがそれと対比して銀さんの顔は歪んだ。
何この子って顔してる。
どうしたこの子って顔してる。
でもなんかなぁ、考えたい事があるのに頭が働かない。思い浮かぶのは、一人しかいないのに。……いつもいつも、何も言わずにいなくなって、人の気持ちぐちゃぐちゃにかき乱しておいて。あの時だって何食わぬ顔して、いなくなっちゃって。私は怒りに任せて持っていた木箆であんことかまぼこを上から叩いた。

「何なんですか…!」
「おいいい!かまぼこが!いや、かまぼこだったものがさらにグロテスクな事になってるうう!!」

文字通りぐちゃぐちゃになったかまぼこを見て阿鼻叫喚している銀さんの声を聞かなかった事にして膝を抱える。
分かんないよ、助けてくれて、話聞いてくれて、お茶飲んでお菓子食べて、寝かしつけに来てくれて、私の誰にも話さなかった事まで聞いてくれて、…それでも離れないで来てくれて。

そこまで私の生活に入って来ておいて、
あなたを気にしない方法があるなら、

私に教えてくださいよ。

「分かんないよ……!」
「…………」
「分かんない…!」
「じゃあわかんねぇままでいんじゃね?」

落ち着きを取り戻した銀さんは鼻に小指突っ込みながらいつも通りのトーンで言った。

「銀さんは、強いから……間違った道でも正しい道に変えちゃうから、……」
「んな事ねぇよ、だったら今俺金欠なんかやってねーし。……間違えだらけの道歩いてきたから、間違った道での生き方を知ってんだよ俺ァ」

大きな手が、頭にのっかる。
死んだ魚のような目が今は優しい光を宿していた。

「お前はまだガキだ。そのわからないって気持ち大事にして思う存分迷いやがれ」
「…………」
「……お前、あとどれぐらい迷って時間かけて、自分の答えに辿り着くんだろうな」

楽しみだぜ、と笑う銀さんの言葉は胸にじんわりと溶けてく。
私はバカだから、道に迷わないと答えに辿り着けない。遠回りして、時間かけて、それでも探すしかない。
そうして辿り着いた答えが、高杉さんの意に反していたものだとしても私は受け入れるしかないんだ。

「銀さん、鼻ほじった手で触りましたね」
「大丈夫、入れてただけだから」
「いや、大丈夫じゃないですよね」
「ごちゃごちゃうるせーな別の穴に小指じゃねぇモン入れてや「すいません警察呼んでください」冗談だよ冗談、可愛い冗談」
「全然可愛くないです」

あの時の言葉が、私を傷つける嘘であり守るための嘘なら、その嘘はあなたも守っていますか。
あなたのそこまでして隠したい事って
一体何なんですか……高杉さん。

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