僕が沖田総悟でさァ。

「ねぇ、一生のお願いだから〜!」

「ダブルデートって...普通に2人でデートすればいいじゃん。付き合ってるんでしょ?」

「付き合って初めてのデートなの!2人っきりって緊張するじゃん!!」



私の親友芽衣子は最近山崎さんという真選組に務める恋人が出来た。
付き合って日が浅いため、デートに着いてきてほしいという話しなのだが、あまり乗り気ではなかった。
ダブルデートのメンバーが芽衣子、山崎さん、私、そして沖田総悟さんというまったく面識のない人が来るからだ。
私の持ってる沖田さんの印象といえば、『破壊王子』や『サディスティック星の王子』といった悪いイメージ。
新聞記事の情報だけで判断するのは良くないかもしれないが...。
怖い人なのは、間違えない気がする。



「沖田さんと2人っきりにする事はないと思うから...お願い!!」



この可愛い親友のお願いを断れればどんなに楽だろうか。
目をうるうるさせる芽衣子に押され、首を縦に降ってしまう自分が憎かった。



そして、ダブルデート当日。
遊園地に集合という事で芽衣子と遊園地に向かう。
男性陣は、もう来ているようだ。
もし、沖田さんに失礼な事して爆破されたりしたらどうしよう。そんな事ばかり考え、引きつった笑顔を男性陣に向けた。


「芽衣子ちゃん!それと...華さんですよね?」



今日は、わざわざありがとうございます。と丁寧に挨拶される。山崎さん、いい人そう。



「あのっ...」



新聞で見たベビーフェイス。
沖田さんに声をかけられ若干ビクつく私。



「はじめまして。沖田さん...ですよね?」

「オレ...いや、僕の事ご存知なんですかィ?」

「あ、はい。沖田さん有名な方ですから」

「......」



無言になる沖田さん。
え?なに?地雷踏んだ?私みたいなのが沖田さんの事知ってて不快になった!!?


「あ、沖田隊長!!コッチが、彼女の芽衣子さんです」



山崎さんが入ってくれて助かった!!
今日は、よろしくお願いします。と芽衣子が挨拶するとペコリと会釈する沖田さん。
機嫌がいいのか、悪いのか分からないままダブルデートはスタートした。
遊園地に入ると、芽衣子、山崎さんは楽しそうに話し出す。
私は沖田さんの隣にいるわけだが2人は無言のまま。
無言な空気に耐えれず、私から話題を降る。



「沖田さん、遊園地のアトラクションはなにが好きですか?」

「あんまり来る事がないんで...特に好きとか嫌いとかありやせんねィ」

「そうなんですね。私も遊園地は久しぶりで...」



気まずい!!
最初の質問間違えた気がする!!また少し無言が続いた後沖田さんが口を開いた。



「華さんは....彼氏と遊園地行ったりしないんですかィ?」

「彼氏とかここ数年出来てないんです。沖田さんこそ、彼女さん居ないんですか?」



芋侍は彼女なんてなかなか出来ないんでさァ。と謙虚な意見が返ってきた。
何気に会話も弾み出し、アトラクションも何個か乗った。
気づいたが沖田さんは、優しくて、気の利く人。怖い人と思って警戒していたのが申し訳なくなった。



「華!次はコレ入ろう」



芽衣子が指差すのは、お化け屋敷で...正直気乗りしなかったが芽衣子のテンションに流され入る事となってしまった。
先に芽衣子と山崎さんが中に入る。
しばらくすると芽衣子の悲鳴が聞こえビクッとしてしまう。
店員さんにどうぞと言われ中に入ると、もちろん中は真っ暗で...正直怖い。
暗闇を歩いていると、トントンと肩をたたかれ、条件反射で振り向く。



「戦に負けた...痛い...助けて....」

「きゃぁああぁあぁあ!!!!」



頭に矢の刺さった落ち武者がぁあぁあぁああぁ!!!!
咄嗟に沖田さんの手を取り、走る。



「...妻に...逃げられ....もう...」



首吊りの侍ぃいぃいぃぃいい!!!!



「おれは...一番の....走り屋になりたかった....」



首なしライダーぁあぁぁあぁあぁ!!!



しばらく走ると何も出なくなり呼吸を整える。
落ちついて右手を見ると沖田さんの手。



「す、すみません!!!勝手に手握ったりして!!!」



バッと手を離すが、私はなんて事をしてしまったんだろうと罪悪感。
今日会ったばっかりの訳分からない女に手を握られて、沖田さんが不快にならない訳がない!!


「すみません、すみません、ごめんなさい!!」

「い、いや...怖いなら、手...繋ぎやす?」

「いいんですか!?」



沖田さん、いや、沖田さま!!
新聞の記事に惑わされてましたよ私は!!
すっごくいい人!!優しい人だよ!!

手を握り、また暗闇を歩く。お化けの登場に私は、わーきゃー騒いだが沖田さんは大丈夫と声を掛けてくれた。
光が見えてやっと出口...!!



「沖田さん、ありがとうございました。なんとか乗り切れました!」

「いやっ...あの...手...」

「手?あ、いつまでも握っててすみません。かなりキツく握ってましたけど、大丈夫でした?」

「だ、大丈夫っス!!あの、もしよかったら...」



もしよかったら?なんだろう。
沖田さんのお願いならなんでも聞いちゃいますよ。と言うと、俯いたままなんでもありやせん。と小さく言われた。



「あっ...沖田さん...」

「なんですかィ!?」

「あの2人何処に行ったんでしょう?」



辺りを見回しても2人の姿がない。
芽衣子に電話してみますね。とケータイを手にする。



「あの...あれだったら、2人にさせてやりませんかィ?」



付き合って間もない2人の間に入るってのが、申し訳ないんでさァ。と言葉を続ける沖田さん。
確かに。部外者の私達がいても、2人は楽しめないかもしれない。



「そうですね。2人はそっとしておきましょう」

「あっ...の...僕と2人で回る事になりやすけど...大丈夫ですかィ...?」

「私は全然大丈夫ですよ。沖田さん優しいし、いい人だから」

「いい人.....」

「沖田さんこそ、私と2人になっちゃいますけど、大丈夫です?」

「大丈夫どころか!!嬉しい...で...す」



嬉しい?沖田さん団体行動苦手なのかな?
それから、2人でアトラクションを制覇していき、気づけば夕方になり閉園まであまり時間がなかった。



「...華さん、お願いがあるんですが...」

「なんですか?」

「最後に...観覧車乗りやせん?」



沖田さんの提案に二つ返事を返し、観覧車に乗る。
時間がすごくゆっくり流れているような気がして心地よかった。



「今日は、ありがとうございました。沖田さんが来てくれて楽しかったです」

「いや...僕も楽しかったっス...」

「沖田さんって、思ってたより話しやすいし、謙虚ですね」

「そ、そんな事ありやせんぜィ。華さんの前だから...」

「私の前だから?」



いえ、なんでもないです。とまた俯く沖田さん。
沖田さんってもしかして女の子と話すの慣れてないのかな?



「あのっ...また、遊びに行きやせんか?華さんが嫌でなければ...」

「ぜひ!!ご飯でも行きましょう」



ケータイを取り出し、電話番号を聞くとテレながら番号を教えてくれた。
なんか、すごい可愛いんだけど!!
この小動物みたいな可愛いさはずるい。反則ですよ!!

あっという間にゴンドラは、地上に戻る。
2人で出口のゲートへと向かう途中、沖田さんが口を開いた。



「あの、今日のお礼に何かプレゼントしたいんですが...」

「お礼なんていいですよ!こちらの方がお礼したいくらいで...」

「土産屋、入りやしょう」



お土産屋さんには、遊園地のキャラクターグッズが沢山置いてあり、マスコットのラッキーうさぎが目に止まる。



「ラッキーうさぎ、好きなんですかィ?」

「あ、はい。可愛いですよね」



ラッキーうさぎのストラップを迷いなくレジに持って行く沖田さん。



「これ、もらって下せェ」

「いいんですか?」



構いやせん。と、一言。
かっこよすぎるよこの人!!
もらったラッキーうさぎをケータイにつける。
ありがとうございます。と言うと優しく頬笑まれた。
帰ろうとしたところで、私の目にラッキーうさぎの恋人、ウィキーうさぎのストラップが写った。



「沖田さん、ちょっと待ってて下さい」


レジに行きお金を払う。
ウィキーうさぎのストラップを渡すとポカンとした表情の沖田さん。



「もらっていいんですかィ...?」

「私も沖田さんにお礼したかったので」

「ありがとうございます。嬉しいっス...」



ストラップをケータイにつける沖田さん。
2人でゲートに向かうと芽衣子と山崎さんの姿があった。
芽衣子が私の側に来て耳打ちする。



「2人にしないって言ったのに、ゴメンね。大丈夫だった?」

「うん、すごく楽しかったよ」

「そう...沖田さんどお?」

「どお?って聞かれても...気の利く優しい人だったよ」

「えっ...優しい...?」

「うん。芽衣子も新聞に踊らされてるんだよ。サディスティック王子とか呼ばれてるみたいだけど全っ然。沖田さんすごくいい人だよ!」

「あはは...そっか。それなら良かった...」



山崎さんと、沖田さんは、真選組に戻るのでここでお別れだ。



「沖田さん、今日はありがとうございました。1日が過ぎるのがすごく早くて...楽しかったです」

「今度、連絡してもいいです...かィ?」

「はい、ぜひ!」



こうして私と芽衣子は遊園地を後にした。
正直乗り気じゃなかったダブルデートだったがいい休日を過ごす事が出来た。
芽衣子に感謝しながら家路に着いた。

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