龍は少女に恋をした
それは清い瞳の美しい娘だった
手を繋ぐには少女は柔らかすぎた
花を手渡すには龍の爪は鋭すぎた
繋がるには棲む世界が違いすぎた
現実を知るには少女は幼すぎた
いつか同じ場所に立てる
ずっと信じていたかった
けれど世界はそれを赦さない
募るのは愛情と劣情ばかり
どうして違うのだろう
何故を繰り返す先に
幸せな未来は無いと知った
想いに焦がれた龍は泣いた
ただ愛のために泣いた
その手に掴むのは笑顔の少女
浮かべるは純粋故に残酷な笑み
握る手に力を込める
愛しさの分だけ強く、強く
少女はまだ笑っている
透明な涙は龍の皮膚を伝う
「幸せになりたいんだよ」
ささやかなのに叶わない願い
出逢った瞬間に始まった悲劇
こうしなければならない結末
清き花弁は悲しく散り逝く
それでも少女の顔は穏やかだった
龍は独りで泣いていた
大地に咲いた曼珠沙華を見つめて