03


風が吹いている。髪が打ち靡いている。
目を覚ませば森の中。そうか、これは夢か。うん、夢だ。

「は…?」

しかし、目の前の現状を信じられず、声に出してしまう。起き上がろうと身体を動かせば腹部に激痛が走った。

「ッツ!?」

夢じゃないらしい。すげぇ、痛い…。血が固まり、服が傷口に張り付いてる。
少しは傷口はふさがっているらしいが、痛いのには変わらない。
あ、やべ…傷口開きそう。


つか、ここ……何処だよ。
薄暗い森の中なのは分かる。だが、さっきまで俺がいたところはこんな森の中ではなかった。
何かがおかしい。


「どういうことだよ…」

「ふむ…、珍しいのぅ…」


「ッ!? 誰だッ!」

全然気付かなかった。振り向けば髭の凄いじいさんがいた。
振り向いた衝撃で傷口が開いたようだ。血が流れ出す。
慌てて傷口を手で押さえ血をとめようとする。このままだと…出血多量でやべぇかもな…。


「…あんたは…誰だ」

警戒を怠らず、視線をじいさんに向けながら問いかける。


「わしは、このホグワーツ魔法魔術学校の校長をしておるアルバス・ダンブルドアじゃ」


「ホグワーツ…? 聞いたことねぇな…つか、魔法…?」

魔法魔術学校って何だよ…、そんなファンタジックな学校があるのか…?
そんなわけねぇだろ。はっ…もしかして、この爺…ぼけてんのか…?


「次はおぬしの番じゃよ」


「あ、あぁ…俺はアメストリス軍、中央司令部所属。ルキフィス・エルリック准将だ」

何がなんだかわからねぇ…つか、傷が痛い。


「ふむ、アメストリス…聞いたことないのぅ」

は…? そんなわけあるか。アメストリスって言ったら分かるはずだ。

俺は、そこで一つの仮説を考えてしまった。


「まさか…異世界、門の向こうの世界なのか…?」


アレから、ダンブルドアには敵意がないことを知り、傷の手当をしてくれるということで学校のほうへ向かった。
傷は、頭、腹部、腕、頬と結構怪我をしたため包帯だらけだ。まぁ…あんなことがあったのにこれだけの傷なのだから運がよかったんだな。
それと、真理に持っていかれたはずの腕と足は元に戻っていた。機械鎧じゃないのは、なんと言うか不思議な感じだ。自分の腕なのだろうが、自分の腕じゃないような気がする。
ホグワーツの校医だというマダム・ポンフリーに糞不味い液体を飲まされ、安静にしていろと怒られたのは言うまでもない。
傷は意外にも浅く、すぐに治るらしい。あっちでは死ぬほどの大怪我をしたのに不思議なもんだ。
というか…俺、生徒じゃないんだがなぁ…。


そして、信じたくないがここは異世界だ。俺のいた世界では魔法なんてものは無い。錬金術はあるけどな。
こっちにも錬金術はあるみたいだが、根本的に違うらしい。らしいというのは、まだ自分で確認したわけじゃないからな。
しかし…これからどうするか…。ここの世界のことは何一つ、といっていいほど知らない。

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