02


(なあ、知ってるか?)

(何をだよ。)

(あの、平和島静雄のパンチを片手で受け止めた奴のことだよ!)

(あぁ、あれか。知ってるぜ。)


(金髪に赤いエクステの男のことだろ?)



むしゃくしゃする。それもこれも、全部昨日の奴の所為だ。アレから、俺は逃げた。いや、逃げたというよりも仕方なく、だ。部屋に荷物が届いたらしい、とのことを連絡受けた。


「悪ィな、荷物が届いたんでな。俺は、帰らせてもらうぜ。」


「あ? 手前、逃げんのか!」


「逃げねぇよ馬鹿が。人待たせてんだよ、喧嘩ならまた今度してやるぜ。」

と、いった具合だ。つか、今更だが…ダラーズって何だ?


明日から、学校だよな…。俺って、一応転校生ってことになってるんだよな…。


つか、隣に挨拶した方が良いのか?


**

町に出て、適当に買ってきたゼリー詰め合わせ。約1300円相当。安いが…良いよな?


―ピンポーン。

インターホンを鳴らす。すると、少し経てばバタバタとした音が聞こえてきて、ガチャリと住人が顔を出す。

「あ、はい…あれ? どちら様ですか?」

「隣に引っ越してきた、ルキフィス・エルリックって言うモンだ。えーと、竜ヶ峰…さん?」


「あ、竜ヶ峰帝人です…。えっと、ルキフィスさん? あ、僕のことは自由に呼んで下さい。」


エアコンみてーな苗字だな…。

「ありがとな、帝人。俺は何でもいい。そうだ、これ。ゼリーの詰め合わせなんだが、良かったらどーぞ。」


といって、紙袋を差し出す。お隣さんが良い奴で助かった。高級マンションとかじゃなくて、たまにはこんなアパートもいいもんだな。俺が金出す訳じゃねぇけど。

「それじゃな、帝人。あー…ところで、学校ってどこはいってんの?」

「えっと、僕は来良学園です。」

「そっか、俺も明日からそこに入るから。同じクラスだと良いな、じゃあな。」

に、と笑えば俺は部屋へと戻った。殺風景な部屋にダンボールが3,4つほど置いてある。ダンボールを開ければ、仕事の書類や衣服…つまりは、生活に関するものだ。今回の滞在は長く、ダンボールもアメストリスにある家から送ったものだ。


「飯でも、食いに行くか。ついでに、探索だ。」

財布とケータイ(あんまり使ってない)を手に取り家を出る。勿論、鍵はちゃんと閉めた。欠伸を一つ漏らしては歩き出した。

**


「人多いなァ…。」

休日ということもあるのだろう、池袋には色々な人が溢れていた。そして、ルキフィスの顔を見てヒソヒソと話す輩もいた。それに写メも。昨日のことがすでに、広まっているのか、ルキフィスにとっては迷惑極まりないことだった。

ふと、そこに昨日のバーテン服の男…静雄(…だったような気がする)がいた。背、高ェなぁ…。俺もあと2cmぐらい欲しいし(現時点で180cm)。いや、それよりエドに上げた方が…。まぁ、良いか。


「あ、絡まれてやんの。」


遠目からしか確認できないが、静雄は絡まれているようだった。黄色いバンダナやら何やらを身につけてる人物らに。あれも…ダラーズ、だっけか? まぁ、そんな感じの奴なのか。


「池袋わかんねー…。」

とりあえず、近寄ってみた。すると、いきなり自動販売機が顔の横を通り過ぎていった。


「ッ、は?」

え、えぇ? と過ぎていった自動販売機と正面の黄色い奴らを見る。静雄は何か、標識持ってんだが。いやいや、ありえねぇだろ。何で標識? てか、自動販売機投げたのもアイツか!?


「…ククッ、面白ェ…。なぁ、それ…俺も混ぜてくんねぇ?」

少しずつ歩み寄り、黄色い奴らと静雄に近づいていく。黄色い奴らは全員顔を青くしてルキフィスの顔を見ている。

「あ、あいつって…静雄の拳受け止めた奴じゃね…?」

「はは、まさか! そんなはず、ねぇだろ…?」


いやいや、そんなはずがあるんだよなァ、それが。と内心突っ込みを入れるルキフィスだがその際、どうでも良いと思っていた。

「またお前か、そんなに殺されてぇのか?」


「は? まさか、んなはずねぇだろ。俺にはまだやることが残ってるしなァ。」


やることと言えば、エドとアルの体を戻すこと。あとは、俺のやりたいこと。それが最優先。もう、俺は元の手足にならなくても良いと思ってた。それが、俺の“罪”だから。


「それじゃあ、邪魔すんなよ。」

「無理。だって楽しそうだし。」


にらみ合うルキフィスと静雄に怯えている黄色い奴らは悲鳴を上げながら逃げていった。


「ッ!? あ! てめ!」

声を上げるのが遅かったのか、奴らはもう見えなくなっていた(凄く速い、オイ)。そしてまた、ルキフィスと静雄はにらみ合った。
静雄はキレていた。そして、ルキフィスも同じだった。

通りかかる人はひそひそと話して、写真を撮る。ここには野次馬がいた。そこに、ファーつきのコートを着た男がいた。男はにやりと笑えば踵を返してその場から去る。

新たな波乱を起そうとすべく楽しそうに笑っていた――。

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