01


日本に来るのは、2回目だが…日本って、こんなに可笑しかったか?



仕事帰りで、軍服のまま飛行機に乗り日本まで来れば東京・池袋の地へと足を運んだ。時差の所為か、凄く眠ィが…日本というか池袋は晴天、そして真昼時だ。

今回の任務は、また学園観察だった。今度は高校生だと言うが、俺はすでに20歳だ。やっぱり、俺にこの任務は可笑しいと思うぜ、絶対。


「ったく、あっちィなァ…。」

スーツケースをガラガラと引き、滞在するアパート(ボロ)へと歩き続ける。今の俺の姿は、軍服だ。アメストリスならまだしも、此処は日本だ。少し(どころじゃない)浮くが、仕方ねぇことだ。つか、絶対コスプレだと思われてんだろうなァ…。


「ちょっと、おにーさん?」


「あ? 誰だ、テメェ…。」

ちゃらちゃらとした、男達―若干、ふけて見えるが大体同じぐらいの歳だろう―。


「何その服。コスプレ…? ぎゃははっ! コスプレするんだったら、秋葉にでも行って来いよ…!」

ぎゃははは、と笑う男Aにルキフィスは特に気にも留めないように、また歩き出そうとする、が。所詮、そう簡単にはいかないものだ。


「あ? 待てよ、おにーさん? 俺らさぁ、ちょっとお小遣いが欲しいんだよなぁ? わけてくれねぇ?」

「そうそう、財布の中身全部でいいからさ〜。」



馬鹿か、こいつら…。今時、こんな不良どもがいるなんてな。

「うっせェなァ…。こっちは、飛行機に乗って疲れてんだよ…。」

声をワントーン低くして言うと、男達は怯む。だが、それも一瞬だけ。すぐに、男達はキレる。今時の若い奴ってキレやすいって言うが…本当だったな。


「俺らは、ダラーズ何だぜ! テメェなんざ、かっこつけ野郎じゃねェか!」


ぷち。


「どうせ、何処かの田舎から来たんだろ! 弱ェ奴が、強気になってんじゃねぇよ!」


ぷちぷち。


「テメェは、家でママのオッパイでも吸ってな!」


ぎゃははは、と笑う男達は知らなかった。ルキフィスはアメストリス内では喧嘩を売ってはいけない人物だと。そして、何かが切れる音がしたのも、男達は知らなかった。


「はっ、良い度胸してんじゃねぇか…。俺に喧嘩を売ったこと、後悔させてやるぜ?」


刹那。男Aが宙を舞った。「げふらっ!」なんていう声とともに。ルキフィスが何かをやったわけではない。突如として現れた、バーテン服を着た、青いサングラスをかけた男に男Aは殴られていた。

「お、おい…。静雄だぞ…。どーすんだよ…!」

「に、逃げるしかねぇじゃねぇか…!」


は? 静雄? 誰だ…って、アイツしかいねぇな。バーテン服を着ている、男。


「手前ら、良い度胸してんじゃねぇか…。俺の前で喧嘩するなんてよ…。俺の前で、喧嘩するってことは手前らを殴ってもいいってことだよなぁ?」

「に、逃げろ…!」

静雄、とやらがそう言ったとき男達は走り去って言った。静雄は、「あ、おい待て!」なんていって追いかけようとするが、ルキフィスは静雄の腕を取り静止させる。


「っと、待てよ。お前、いきなり来ておいて何様のつもりだァ…?」


面倒事は、嫌いだ。だが、ルキフィスはそれよりも嫌いなことがあった。誰かに、守られるということだ。


「あ? 助けてやったのにその言い草はねぇんじゃねぇか…?」

「はぁ? 誰が助けろって言った? 折角の、ストレス発散がなくなっちまったじゃねぇか…。」


ルキフィスは怒っていた。そして、静雄も怒っていた。二人とも、同じ理由で。


(コイツ、マジでムカつく…。)


静雄は、一発で終わらせようと腕を振りかざしてルキフィスを殴ろうとする。しかし、普通の人間ならば先ほどの男のように殴り飛ばされていただろう。ルキフィスは、静雄のパンチを受け止めていた。


「痛ェな…。いきなりはねぇんじゃねぇかァ?」

「うるせぇ、黙ってくたばれ。」

通行人たちは、目を見開いていた。あの、平和島静雄のパンチを片手で受け止めている人物がいたのだから。そして、通行人はいっせいに友人、知人に連絡をする。


新しく、この池袋に敵に回してはいけない人が加わったのだから――。

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