01 こんにちは
私、恋したみたいです。
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「嘘でしょ…? あんたが恋…?」
友人に相談したら嘘だと思われました。ちょ、酷い。
生まれてこの方、恋愛というものをしたことない私は、友人に相談してみた。
その人を見てると胸がきゅう、とする。最初は病気か!? なんて思ったけど、よくよく考えてみたら、クラスメイトが話している胸キュンとやらではないのか、と思いついたのだ。
「千乃がねぇ…、で相手は誰?」
「花京院くん…」
ポツリと呟くように答える。花京院くんは特徴的な前髪に整った顔立ちをしている。つまりはモテるということだ。あれ? 前髪は関係ない? まぁ、いいや。
「花京院っていうと…窓側の席の? 何か、あいつって皆と距離おいてるよ?」
「うん、花京院くんが皆と距離おいてるのは知ってるよ。けど、そこが良いんだよねぇ…」
ぽわん、とした表情で答えると友人は「駄目だこりゃ…」と呟いた。何で?
「まぁ、千乃のことは応援するよ。ほら、花京院来たよ。」
「えっ!」
友人から背中を押され、花京院くんの目の前に転ぶような形で前に出た。
というか、思いっきり転けた。
痛い…。
「大丈夫…?」
「う、うわわわっ…! ごめんなさい! 大丈夫です! 無事です! 」
ぱんぱんと埃を払いながら、花京院くんの手を取り立ち上がる。
友人の方を睨むと、花京院くんに向き直り、羞恥心から若干顔が赤い千乃はどもりながらもお礼をいった。
「か、花京院くん。ありがとう!」
「うん、気にしないで。佐久間さんも気をつけた方がいいよ。」
「あ、うん! 邪魔しちゃってごめんね。」
花京院くんはそういうと席に戻って本を読み始めた。
てか、名前! 名前呼ばれたよ…! 苗字だけど…!
嬉しい…!今日はいい日だ…!
明日にでも、お詫びの何かを花京院くんに渡そう。