04

襲われていたのは少年のようにも見えるが恐らくは少女だろう。幼さを残した少女だった。少女は、村人に肩を捕まれていた。

最初は、村人の仲間かと思ったが顔立ちからして東洋人だろう。となると、少女もアシュリーと同じく連れてこられた可能性がある。

レオンは銃を構えた。集中して、狙いを定めるも、少女が動いていて上手く定められない。頭を狙うにも少女が邪魔で打てない。

「Don't move!」

少女に通じるかどうか分からないが、声を上げた。少女にはどうやら通じたようで動きを止めてくれた。レオンは村人の背中を狙い、引き金を引いた。銃声が鳴り響いた後、村人は少女の離し大きく仰け反り体を丸め込み痛みを堪えていた。

「おい、よけろ……すごいな」

すぐに離れろと指示を出すつもりだったが、少女は村人に踵落としを食らわせていた。見事な技で思わず感心していた。村人は地面に叩きつけられた後、動かなくなった。

少女は、見かけによらず強いらしい。村人から距離を取った後その場へ座り込んでいた。前言撤回だ。少女は、普通の少女のようだった。


「大丈夫か? キミは……日本人のように見えるが、どうしてここに?」

座り込んでしまった少女の元へ歩いていく。少女の顔を良く見ればどうやら日本人のようだった。此処は、日本人が観光でくるような場所じゃないと思うが…。

「大丈夫、です。えっと、気が付いたら此処にいました…」

大丈夫だと答える少女はレオンの顔を見て、驚いた表情をしていた。驚いていたのは、ここに普通の人がいたからか…?
気が付いたら此処にいた、か。普通ならそんなことはありえないのだが…、少女が嘘をついているようにも見えない。

先ほどから、肩を抑えているのは痛みに耐えていたからか。


「肩は、大丈夫…そうじゃないな。ちょっと見せてくれ」

少女はレオンの言葉に従い、傷を見やすいように服をずらした。白い肌には、手の形をしたあざがくっきりと残っていた。片方だけではなく、両方に。これは、酷いな。


「つめた、」

レオンは腰のポーチから救急スプレーを取り出し、あざに向かって噴射する。少し、痛むかも知れないが我慢してもらおう。どうやら、痛みより冷たさの方が沁みたらしい。スプレーを噴射した後、シップを貼る。応急処置だが、これで大丈夫だろう。


「キミは奴らから連れてこられたのか?」
「いえ、覚えてないです…、僕も何で此処にいるのか…」

治療を終えた後、レオンは少女に尋ねた。奴ら、というのは村人のことだ。しかし、少女の答えは予想外だった。覚えてないだと?
村人ではないことは確かだ。彼女の服は村人のように古臭いものではない。どちらかというと…動きやすさを重視したような服だ。

「一時的な記憶喪失か…? 畏まらなくて良い。俺はレオンだ。レオン・S・ケネディ」
「じゃあ、普通に話すけど…僕は、桐生湊です。あ、こっちでは逆だったっけ。ミナト・キリュウだよ」

日本人は謙虚だと聞いたことがあるが、本当らしい。堅苦しい英語は聞いていたくない、だから少女には普通に話してくれと頼む。少女はミナトというらしい。
随分と英語が上手いな。日本人の英語は遅れてると聞いたことがあったが…。

「レオンさん」
「レオンだ。」
「…レオン、レオンはどうしてここに?」

考えに耽っていたら名前を呼ばれた。レオン“さん”なんて柄じゃない。だから、訂正させる。ミナトは不服そうだが、構わない。さて、ミナトの質問はどう答えるべきか。流石にここに置いてけぼりにする訳にはいかないな。連れて行くしかないだろう。

「人探しだ。大統領の娘を探している。ミナトも付いて来い」

そういって手を差し伸べる。ミナトはレオンの手を取り立ち上がった。さて、お姫様を探しに行くか。


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