「じゃあ、行ってきますね。あ、お昼は冷蔵庫に入れてあるんで、チンして食べてください」 「うむ。令呪はちゃんと隠すのだぞ。もし、ほかのサーヴァントに出会ったら我を呼ぶがいい」 出かける前、瀬奈はギルガメッシュに声をかけた。 ギルガメッシュは携帯ゲーム機に夢中で、こっちを向いてはくれないが、返事だけはしてくれた。 「分かってますよ。それじゃ、行ってきまーす」 ドアを閉めて、鍵も掛ける。今日は、いい天気だ。 そうだ、今日は特売日だ。学校帰りにスーパーに寄らないと……。 聖杯戦争に巻き込まれてから、学校は休みがちになっていた。 ひょんなことから、ギルガメッシュのマスターとなってから、瀬奈の幸運度は限りなく低くなった気がする。 サーヴァントのステータス風にいうと幸運:Eといったところか。 魔術師として未熟だが、魔力だけは大量にある瀬奈。 ギルガメッシュが惹かれたのはそこだろう。 と、いってもギルガメッシュはすでに受肉している身。 魔力は宝具を使うときぐらいしか使わない、はず。 「うーん、わからん……」 「何がわからないんだ?」 不意に掛けられた声。瀬奈は「ひゃっ!?」と情けない声を上げ、振り向いた。 そこには、衛宮士郎がいた。士郎とは、スーパーでの買い物仲間、といったところか。 「び、吃驚したぁ……おはよう、士郎くん」 「悪いな、そんなに驚くとは思わなかった」 「いや、いいんです。ちょっと考え事してて」 「まぁ、相談があるならのるぞ?」 「んー、そこまで、重要なことじゃないから大丈夫です。ところで、今日、スーパー行きます?」 「あぁ、行く。今日は肉が安いからな――」 そんな会話をしながら、学校まで歩いた。 ** 学校も終わりスーパーに向かって歩いていれば、次第に空が暗くなってきた。 もしかしたら、一雨来るかもしれない。 朝と昼はあんなに晴れていたのに、と瀬奈はため息混じりに呟く。 そういえば、ギルガメッシュは昼飯と食べてくれただろうか。 「あ。傘、持ってきてないや……」 ともかく、さっさと買い物を済ませてしまおうと小走りでスーパーに入る。 さて、吟味タイム。 今日の晩御飯は、野菜炒めにでもしようかな。それとも、生姜焼きにしようか……。 色々と眺めながら、晩御飯の献立を考える。 生姜焼きにしよう、そう決めればさっさと材料をカゴへ入れ、ついでにお菓子とデザートをカゴに放り込めばレジへと向かう。 会計を済ませ、レジ袋にすべて入れ終え、スーパーから出るとぽつぽつと雨が降り始めていた。 「やばっ……」 雨が本降りにならないうちに、帰らなければと瀬奈は走り出した。 しかし、瀬奈が家へ帰るよりも雨が本降りになるほうが早かった。 近くの屋根のある場所へ雨宿りさせてもらう。 家まであと少しというところなのだが、仕方ない。少しの間、雨宿りさせてもらうことにした。 ** 雨は相変わらず、降り続いていた。 止むことも、弱まることもなく。 瀬奈は焦り始めていた。雨宿りをしてから10分近く経っているが、止む気配も弱まる気配もないのだから。 このまま、時間が経つにつれて、ギルガメッシュのイラつきもあがっていくだろう。 いざとなったら、走って帰ろう。ギルガメッシュに怒られるくらいなら、濡れた方がましだ。 そう、結論付け一人頷いていればふと自分を呼ぶ声がしそちらを振り向くと死ぬほど吃驚した。 「何をしている雑種」 「ファッ!? え、ギルさん!? え、え? 何で!?」 瀬奈は驚きに目を見開き、慌てている。 ギルガメッシュがいたからだ。 「雨が降っていたからな。迎えに来てやったぞ」 そういうが、ギルガメッシュの手にはレジ袋が。 買い物帰りに見つけたフラグですね、分かります。 でも、まぁ…たまにはこういうのも良いかな。 これで濡れずに帰れます。 雨宿り (ギルさんに相合傘ですね、と言ったら叩かれた。酷い。) << |