3.本当は今すぐ会いたい
「大丈夫だよね? ちゃんと、帰ってくるよね!?」
嫌な予感が頭を過ぎり、思わず言ってしまっていた。彼が、ピアーズがいなくなってしまいそうな、そんな予感が頭を過ぎったのだ。
「当たり前だろ。ちゃんと帰ってくるさ、やっぱりあんたは心配性だな」
ピアーズはハルに心配させないように優しい声で言った。そんな彼の優しさが心に沁みる。
「絶対だよ!」
「あぁ。帰ったら、ハルが行きたがってたスイーツ店に行こうな」
「本当!? 楽しみにしてるね」
近場に出来たスイーツ店は、とても美味しいと評判の店だ。まさか、ピアーズと一緒に行けるなんて思わなかった。
ちょっと、気持ちは先走ってはいるが。だって、楽しみなのだから、仕方がない。
それから、他愛無い話をした。今日あったこととか、そんな感じの話だ。
急に、ピアーズが無言になる。ハルは戸惑いながら彼の名前を呼ぶ。
「ピアーズ?」
「本当は、今すぐ会いたいんだ」
名前を呼んだ後に聞こえたのは、今すぐ会いたいという彼の本心。
私だって、ピアーズに会いたいよ…。
そう言いたいのに、言葉が出なかった。
「悪い、さっきのは無しだ。っと、そろそろ眠いだろ?」
「わ、私だってピアーズに会いたい! 会って、ぎゅってして貰いたいよ! だから、無事に帰ってきて!」
話を変えようとしたピアーズにハルは涙混じりに告げる。何故だかは分からないが、急に悲しくなった。
「え、ハル!? 泣くな、ちゃんと帰るから」
駄々っ子のように、泣くハルは大人としてどうなのかとも自分で思うが、一度流れてしまった涙は止まることを知らないかのようだった。
「ひっく、約束だからね…?」
「勿論だ。だから、きょうはおやすみ」
「うん…、おやすみなさい」
涙を拭いながらお休みの挨拶をする。そして、電話は切れた。ピアーズが無事に帰ってくるのを祈りながら、床に入った。